日朝交渉をどう見るか?東京連続集会82 全報告
◆金正恩を国際刑事裁判所に訴追の趣旨説明の日に日朝協議
島田洋一(救う会副会長、福井県立大学教授) 西岡さん、増元さんが強調されたように、今国連で北朝鮮による人権蹂躙を国際刑事裁判所に付託し、人権侵害の最高責任者を特定するという決議案が審議中です。
数週間前、国連の調査委員長で、この問題に関わったカービーさんという元委員長が証言台に立って、北朝鮮側が詳細に反論してくる。それに対してカービーさんが一つひとつ徹底した反論をして、それが欧米のメディアにかなり取り上げられました。そしてその映像がユーチューブで流れており、見ている人が多い。
こういう状態が続いていること自体が北朝鮮にとっては大きな打撃であって、実際に決議案が通るかどうかは別にして、早く終わらせたい。
ポイントはこの決議案はEUと日本の共同提案でアメリカは入っていません。なぜかというと、国際司法裁判所は終戦直後からずっとある機関で、両当事者が参加しないと審議が始められないものです。ところが、国際刑事裁判所は比較的最近できたのですが、原告がとんでもない人権侵害を受けたと言えば、裁判所の判断で司法手続きが始まっちゃう。
従ってアメリカは、米兵が世界中に展開していますから、虐殺に関与したとか、その親玉はブッシュだとか、ラムズフェルド、あるいはキシンジャーだとして、実際に彼らを訴えようという動きがあります。だからアメリカは、国際刑事裁判所に関わる条約を批准していない。特に共和党議員が反対です。今回上院でも共和党が多数になりました。
そしてアメリカは国際刑事裁判所が入っている決議案には基本的に冷ややかです。ということで、提案者のEUと日本のやる気及び信頼性がどのくらい継続するかがポイントになります。その点、この10月28日には、ダルスマン特別報告者が趣旨説明をやっています。
同じ日に、日本の代表団を平壌に呼んでいるわけです。そしてメディアには、特別調査委員会の金色の看板を見せる。ご丁寧に、スペシャル・インベスティゲーション・コミッティと英語で書いてある。北朝鮮でそんな英語での表記がある筈がないのにです。まさに、世界中にそれを流させて、「歴史的に色々な問題がある日本との間ですら北朝鮮は真剣に人権問題に取り組んでいます」ということをアピールする。