国際セミナー「日朝拉致協議の遅延をどう打開するか」全報告
◆「北朝鮮の権力の主体は組織指導部」は最先端の知識
西岡 力(救う会会長、東京基督教大学教授) 実は今日皆さんが聞いている、北朝鮮の権力の核心に組織指導部があるということは、皆さんは何回も聞いているんです。張真晟さんを我々は何回か呼びました。そこでこの話を何回かしています。
しかし、世界の北朝鮮学会の中では、これは新しい学説として今急速に脚光を浴びています。彼が今年、「ディアー リーダー」という英語の本を書きました。それが、イギリスの新聞社が選んでいる、今年世界に影響を与えた本の8位に入った。
8位に入った理由としてイギリスの新聞社は、北朝鮮の権力の主体が軍部ではなく組織指導部だということを暴いた本だと説明し、影響力を与えたと言っています。
今年9月にオランダの大学で、張真晟さんが主軸になって、何人かの権力中枢部出身の脱北者がいてセミナーをした。ヨーロッパとアメリカの北朝鮮問題専門家が集まって、「そうだったのか」と。アメリカのCIAもこの本を大変参考にして、もう一度分析を書き換えている。
我々の方が先だと僕は思いましたが。我々家族会・救う会はずっと張真晟さんと付き合っているので、当たり前じゃないかと思っているんですが、世界の北朝鮮学の中で最先端の知識が今ここで披露されているということです。
そして、なぜそれがなかなか分からなかったのかということですが、それは金日成時代の権力構造が分からないと分からない。金日成が金正日を後継者にした。金正日がライバルを蹴落として権力を奪い取ったのですが、その後今度は金正日が、自分を後継者にした父親金日成から権力を奪い取ろうとした。そういう権力闘争が内部であったのです。
それに使ったのが組織指導部なんです。それまで組織指導部はそんなに強い組織ではありませんでした。金正日が後継者になった73年、74年頃、金正日は自分の腹心たち、同世代の大学の先輩や同窓生たちをみんな連れてきて組織指導部に入れた。
そして組織指導部の人間を使って、党、軍、政府を検閲したんです。今までのやり方は全部間違っているとつるし上げて、そしてこれからは唯一独裁体制だとしました。唯一思想体系というのはあったんですが、唯一独裁体制、つまり、命令も唯一で、トップの言うことしか聞いてはいけないという体制を作った。それを組織指導部が管理した。
しかし、表向きは唯一独裁体制、唯一思想体系と言って金日成を持ち上げた。外向きには金日成の独裁制性が強まったように見えていながら、名目では金正日が権力を奪うために組織指導部に権力を集中した。