国際セミナー「日朝拉致協議の遅延をどう打開するか」全報告
◆金正日が作ったシステムが今も稼働している
張真晟 張成沢処刑によって、中朝関係が悪くなっています。中国指導部が大変対北感情を悪化させていますし、実際、石油の供給量が下がっています。そこで北朝鮮はヨーロッパにも出口を探し、ロシアにも人を送っていますが簡単ではない。私が見るところ、彼らにとって一番簡単なのは、拉致問題を動かして日本に接近することです。そして小泉総理が北朝鮮を訪問した時に約束した多額の経済協力資金を取ることだと彼らは考えているのではないかと思います。
今の北朝鮮をどう見るのか。金正恩を相手に交渉しようとするのか、あるいは組織指導部を相手に交渉しようとするのか。金正恩を相手にするという見方は、実は金正日時代の残像をそのまま追っているのではないかというふうに私は思います。
金正恩、あの若い指導者が対外関係や内政、現地指導を全部自分でできているのか。そしたら本当に神様と同じだが、そんなことはない。それなのに北朝鮮のシステムが維持されているのは、金正日が死んでも、金正日が作ったシステムがそのまま残っていて、それが稼働しているということです。
権力を金正恩氏が持っているのか、組織指導部の中のインナーサークルの人たちが持っているのか。金正恩が本当にすべての決定権を持っているのであれば、張成沢の公開処刑は起きていないだろうと思います。なぜなら、公開処刑をするということは、実は金正恩政権にとって、首領の神格化という面からもマイナスだからです。首領の一族に逆賊が生まれることになる。
それなのに組織指導部はなぜ公開処刑をしたのか。それは組織指導部の利益、つまり張成沢は自分たちの敵だと、彼を除去しなければ自分たちがやられるという組織指導部の利益が出てきているからです。