国際セミナー「日朝拉致協議の遅延をどう打開するか」全報告
◆すぐに日朝協議はやめるべき
荒木和博(特定失踪者問題調査会会長) 私があまりやさしい話をするとふさわしくないので、率直に言いますが、今まで何回も言っていることですが、日朝協議は一端中止にすべきだと思っています。これ以上いくら続けても意味がない。逆に、こちらが打ち切るといった方が、向こうが話に乗ってくる可能性があると思います。いずれにしても、(日朝協議は)止めるべきだと思っています。
結局、安倍さんが総理大臣になられて2年経ったわけですが、この間、「自分の政権で拉致問題を解決する」と言われたにもかかわらず、事実上ほとんど前に進んでいないと私は思います。
とりわけ、ストックホルム合意以来の半年間、一体何があったのかということを考えると、ほのかな期待を持ったものの、それは裏切られてしまって、これでうまくいくとはとても思えない。
この間、特定失踪者のご家族でも、入院してしまったり、それだけが原因ではありませんが、この間も亡くなられた方がおられて、期待だけさせられて捨てられたという感覚が、私自身も正直言ってあります。
総理の国際構造からの見方、要は中国との関係がよくない。そして、アメリカとの関係も改善できない。こういう厳しい条件の中で日本に寄ってこざるをえない、という見方自体にはそんなに間違いはないと思います。
12年前のあの時と違う最大のものは、あの時はブッシュ政権の一番気合が入った時で、いつ爆弾を落とすか分からない、そういうものがあったから、北朝鮮が怖くなって日本に来ざるを得なくなった。
ところが今回は、アメリカの大統領はとても爆弾を落としそうにはみえない。もしやるとしたら、アメリカの代わりに、日本が爆弾を落とすしかない。中国、韓国がやるとは思えない。
こういう状態ですが、安倍さんは敢えて北朝鮮側を刺激することについては、先ほど西岡さんが言われた国連での動き等はあるものの、主体的に日本国として北朝鮮に圧力をかけることについてはいっさい避けてきている。これはどう考えてもおかしいのではないかと思います。それを本当にやるのでなければ拉致被害者を取り返すことはできないだろう。
総理は、「いざという時にはアメリカに協力を求めることがある」と。それが集団的自衛権につながったと思いますが、集団的自衛権があろうがなかろうが、こんなことは個別的自衛権ですむ問題で、アメリカがいざという時に助けてくれる保障はほとんどないと思います。日本がやるしかない。
ところが、そこのところは、安倍さんは残念ながら乗り越えようとはしていないと思っています。これでは根本的に問題が解決する方向にはないだろうと思います。