国際セミナー「日朝拉致協議の遅延をどう打開するか」全報告
◆金正日が首謀者だということをもっと強力に伝えていくべき
惠谷 治(ジャーナリスト、救う会拉致プロジェクト委員) 荒木さんの後に話すと、軟弱なように思われるかもしれませんが(笑)、荒木さんの「すぐに交渉をやめるべきだ」という意見は、私もよく感じるんです。というか今の交渉には絶望しています。
ただその理由は、先ほど西岡さんが説明されたように、大きな要因として国連の圧力の問題があるので、来年を待とうかという気持ちにもなっています。
今日ここに来るまでは、遅れているのをどうするのかと言われても、その方法は思いつかないということでしたが、先ほど張真晟さんの話を聞いて、やはり首領の問題に結びつける、これは国連の問題にも絡んできますが、そういう方法であればまだ交渉の余地はあるかなと思いました。
話を聞きながら一つ思い出したことがあります。ご存じのように、辛光洙が原敕晁さんを拉致したのは1980年でしたが、辛光洙が85年に逮捕されて、当時の国家安全企画部という情報機関に取り調べを受けた後に、安企部が捜査資料を発表しました。
その中では、「金正日の命令によって」という文がありました。しかし、裁判ではその部分が欠如しているんです。日本政府も我々も、金正日の命令があったのかどうかということを、いわば刑事訴訟法的に真面目に考えるわけですね。そうすると敵もさる者ですから、そういう証拠を出さない。
ですから、張真晟さんの話を聞きながら思ったのは、我々は刑事訴訟法的にも証拠があるのかどうかということに重きを置くのではなくやるべきです。しかし、拉致問題の交渉においては、外務省がそういう交渉ができるかは甚だ疑問です。外務省は刑事訴訟法的な手法を取るに決まっています。
そうするとなかなか言えないにしても、少なくとも拉致問題の解決を願う人間としては、金正恩は拉致を命令はしていないと思いますが、金正日が首謀者だということをもっと強力に伝えていくべきだろうと思いました。