国際セミナー「日朝拉致協議の遅延をどう打開するか」全報告
◆外務官僚は指示を換骨奪胎する能力がある
最近、アメリカのクルストファー・ヒル氏が回顧録を出しまして、私は北朝鮮に関係するところだけチェックしたんですが、彼の発想をみていると、日本の外務省にも通じる面があるなと強く感じました。
彼は最終的に、「(米朝)協議はうまくいかなかったと認めます。しかし、なぜうまくいかなかったかというと、北朝鮮側が核施設に関する査察の具体的メカニズムで、アメリカ側が応じられるような案を出さなかったからだ。だからそれ以上交渉できなくなった。しかし、誰が見ても悪いのは北朝鮮だ。アメリカが一生懸命努力したというのは分かったからそれは認めたんだ」と。
それから「韓国人の感情があって米韓関係が非常に悪かったけれども、自分がライス国務長官のもとでやった外交によって、韓国人のだれもアメリカが平和を乱しているとは言えなくなった。その結果、非常に米韓関係がよくなった。2007年の韓国大統領選挙では、反米の候補は一人も出られなかった。だから総合的に見れば自分はよくやった」ということを書いています。
法務省や外務省の人の評価基準は、こういうところに現れていると改めて感じたわけですが、それに引きずられてはいけない。
最後に関連することについて、中国や韓国が慰安婦問題で、我々から見ると、非常に歪曲した反日的なプロパガンダを国際的に続けている。これに対して安倍首相は、「これじゃいけない。反論すべきだ」という認識で外務省にも指示している。
それを受けて外務省が、「分かりました」と、「ジャパンハウス」という予算をかけて箱モノを作りたいと。反論はというと、「日本は何回も謝りました。アジア女性基金でお金を出しました」と逃げの反論をしている。こういう、指示を換骨奪胎する能力は、外務官僚の方はすごいものがあると思います。
私は、安倍首相は、北朝鮮問題で認識はしっかりしておられると思うんですが、外務省主導に陥らないようにと思います。
追加制裁についてひとこと。もう追加制裁の手段はないという人もいますが、色々あります。そういう圧力も考えるべきだと思います(拍手)。
櫻井 どうもありがとうございました。北朝鮮がなぜ交渉を停滞させているかではっきりしてきたことは、国連に対する対応が必要だということです。しかし、支援を取れるのは日本しかないという相せめぎ合う二つの要素の中で、彼らは身動きがとれなくなっている。
そういう中で、金正恩はだんだん体力的にもおかしくなり、指導力も低下して、何が起こるか分からないという状況が報告されました。
最後に、私たちはもうすぐ選挙を迎えます。おそらく自民党が圧勝することになるだろうと思います。安倍さんの求心力、指導力は今までより強くなっていくはずです。
その安倍政権は何をすべきか。これは政府の中枢部から出たことばですが、「これまでの外務省のやり方は間違っている。軌道修正をしている」ということを聞きましたが、軌道修正をするのであれば具体的に何をすべきなのか。安倍政権は何をすべきかということを含めて皆さんからご提言をいただきたいと思います。