国際セミナー「日朝拉致協議の遅延をどう打開するか」全報告
◆外務省では金の絡む交渉はできないから、新しい交渉を
惠谷 治 7月に4つの分科会が発足した時、私は大変期待しました。というのも遺骨や墓地の管理、残留日本人及び日本人妻の問題、それから拉致被害者と特定失踪者と4つの分科会ができた。
この内、遺骨や墓地の管理は、向こうから見れば外貨がとれると考え、我々から見れば拉致に関して金を払う必要がない。従って、北から見れば、この4つの分科会を統合して金がとれるから寄ってきたと思うんです。
これを逆手にとって、日本政府が拉致を最優先にするというのは、10月にわざわざ平壌にまでいって伝えたと言いますが、交渉の過程で拉致について納得できる回答を出せば、一般的な遺骨ビジネスでなんなら色をつけてやってもいいぞというくらいの交渉をやるべきだと思います。
しかし4つの分科会はそれぞれ独立して何ら連携もなくやっています。その証拠に、遺骨ビジネスに関して、あるいは墓参に関するシンポジウムをやろうと言って4人が来ようとしていました。
結果的にはビザが発行されずにその企画は流れました。本当に私はびっくりして、全く拉致問題と4つの分科会の意味がなく、それぞれ個別に交渉しているということが改めて分かりました。
ですから今後の交渉において、こういうことは表では言えませんが、「金がほしいのであればしっかりした回答を出せ」と絡める、あるいは現在の交渉はみんなの目が光っていますからなかなかむずかしいでしょうが、拉致をきちんとやるのであれば、「総連本部のことも考えてやるぞ」というくらいの交渉をやるべきではないか。そうしないとなかなか解決しないと思います。
外交というのはもともと秘密外交で、なにもオープンにする必要がないと思いますが、ここまでオープンになっていますから。しかし、そういう中でも、今言ったようなことは十分可能だし、逆に言えば外務省のエリートたちはそういう交渉はできないだろう。
ですから今後安倍政権は、新しいやり方でやってもらえば可能性はあるのではないかと考えます(拍手)。