北朝鮮の内部状況と拉致問題の現状‐東京連続集会83 全記録
◆日本との交渉を切りたくない北朝鮮
私は1月にソウルに行って、北朝鮮の内部とつながっているいくつかの人に話を聞きましたが、日本に対する未練はまだ捨てていないようです。ただ、安保理事会を横目で見ながら、いつのタイミングでもう一度日本にカードを切ってくるか様子を見ているのが北朝鮮の内部の情勢です。
そのことを裏付ける公式情報もあります。国連安保理事会の決議を積極的にすすめたのは安倍晋三外交です。しかし北朝鮮は安倍批判をしない。国連総会決議の前後に、激しい非難をしましたが、第1のターゲットはアメリカでした。「国連を舞台にした人権外交はけしからん。アメリカの陰謀だ」と。
しかしこれは事実誤認です。アメリカは国際刑事裁判所条約に入っていないんです。アメリカ人やイスラエル人が国連の場で多数決で裁かれるのに反対なんです。ジュネーブの人権理事会でも、アメリカはほとんど活動していません。EUと日本がやったんです。しかしEUは遠いので、首脳レベルまで積極的ではない。
それなのに、「安倍晋三がけしからん」と名前を出して非難しないんです。「日本はアメリカに追随したからけしからん」とだけ言っています。北朝鮮の外交官や工作機関は情報の分析を間違えるほどばかではありません。分かっていて嘘を言っているんです。それは日本との交渉を切りたくないからです。
本来なら水面下で、国連決議に日本が賛成するなら、あるいは日本は提案国ですから提案国から降りないんだったら、特別調査委員会をストップするぞ、と脅してきてもおかしくないくらい彼らは積極的に外交をしていましたが、そういう話はなかった。
私は少し心配して、外務省がそういう裏話に乗ってしまったらまずいなと思っていたんですが、そういうことはなかった。最後まで、そこは外務省も頑張りました。
福田政権の時、一度再調査委員会ができたんですが、「福田さんがやめて麻生さんになる」という理由でやめました。彼らはやめようと思ったらいつでもやめられるんです。国連の決議を日本が提案したというのは、やめる一番の理由になることだったのにやめなかった。ある脱北者が北から聞いた表現では、「未練が残る」です。その通りなんです。
それがいつになるのか。しかし、北朝鮮も今厳しい状況に置かれています。日本からまとまったお金をとろうとするならば、拉致問題についてそれなりの回答をしなければならない。それは金正日が、「秘密を知りすぎているから死んだと言え」と言った人を返さなければならない。遺骨にして返すのか。それが発覚したら大変なことになるという意見もある。