北朝鮮の内部状況と拉致問題の現状‐東京連続集会83 全記録
◆覚醒剤が蔓延
西岡 一方で国内の荒廃状況もすごくて、麻薬が蔓延している。覚醒剤ですね。国内でたくさん作って中国や日本に持ち込んでいたんですが、その販路が今、かなり厳しくチェックされていることもあって、覚醒剤が蔓延している。
金正恩の命令で、各道に一つずつ患者の治療施設を作った。施設はいつも満員で、当初は6か月入院させていたけれども、今3か月に短縮した。それでも足りなくて新しい施設を建設中だ、と。
幹部はヘロインを使って、庶民は覚醒剤を使っている。5人兄弟の内、4人が中毒という家庭もある。庶民は覚醒剤を万能薬と考えている。労働突撃隊というのがあるんですが、工事現場などで働かされる。
そこで覚醒剤を与えると、食事をしなくても力を出して働く。覚醒剤を取り締まるべき保衛部員が率先して覚醒剤を使っている。彼らは夜出勤することが多いから、覚醒剤を使っているんだと自己弁護している、という状況です。
そしてチャンマダンという市場では、北朝鮮のお金が使われなくなってきている。平壌近郊の都市では、ドルや人民元やユーロでなければだめだ。北朝鮮の金が使えるのは、闇たばこととうふともやしなどで、米はもう北朝鮮の金では売ってくれない。
月給3000ウォンで、それを6か月ためてたまごが5個買える。子どもらもお年玉や小遣いに北朝鮮の金をもらっても喜ばない。破って捨てて、金日成の肖像画があるので政治問題になっている、という状況だと聞きました。
惠谷 麻薬や覚醒剤は、北朝鮮では国家の工場で作っています。戦後日本ではヒロポン、覚醒剤がありましたが、これは密造です。北朝鮮では国家が正々堂々と作っています。
密造すると化学薬品を使いますので臭気がひどいですから、山の中に秘密工場を作ります。それが、最初韓国、台湾、中国本土、その次に北朝鮮が作っています。だいたい10年おきにそれが動きます。
それはどういうことかというと、最初は密売で犯罪ですが、日本に売って外貨を稼ぐんです。黙認をしていたんです。ところがその販路がだんだん厳しくなると、販路を広げるため国内に売っちゃうんです。そうすると国内問題になります。
それまでは外貨が入ってくるので目をつぶっていましたが、もう目をつぶれなくなる。摘発をどんどん進めるようになるまでがだいたい10年。韓国でそういうことがあり、次に台湾に移り、中国と。そして今回北朝鮮。
以前、麻薬が話題になった時は作り始めで、国営企業が作るわけですから密造と比べて品質も断然いい。ある時期7割くらいまで北朝鮮が席巻したことがありますが、当然東京は厳しくチェックしますから、今は北朝鮮産は少なくなっています。
おそらく今、ロシアの田舎で臭気を気づかれないところで作っているんだろうと思います。どの国も最初は外貨が入るので黙認するんですが、結果的に国内で出回るようになり、完全に取り締まるようになります。そういう繰り返しでした。北朝鮮は今その後遺症に悩んでいるということだと思います。
昔から麻薬は作られています。芥子で、これは薬でもありますから、アヘンを呑めば病気が治るんだという民間療法、民間信仰もありますし、そういう土壌があれば覚醒剤も飲むハードルが低くなると言えるかもしれません。