「特別調査委員会」1年全拉致被害者を取り戻す緊急国民集会全記録
◆時間を浪費して風化させようという北朝鮮の戦略に制裁案13項目
古屋圭司(自民党拉致問題対策本部長、前拉致問題担当大臣、衆議院議員)
ちょうど1年前の4月、私は拉致問題担当大臣をしていまして、その時に重いドアをこじあけて協議の場に引きずり出すところまではきました。その時私は、「ここからが胸突き八丁の協議が始まる」と会見でも言いました。
残念ながら、胸を突く相手が出てこないんですよ。本当にこれは怒りを覚えますね。煮えまくっている。ひたすら時間を浪費して風化させようというのが北朝鮮の戦略なんです。その手に乗るわけにはいかないんです。
今櫻井さんがおっしゃったように、アメリカはもし自国民が拉致されたことが分かったら、軍隊を入れて取り戻してきますよ。日本はそれができますか。それができないんだ。9条があるからしょうがないんだ。だからこそ私たちは、それ以外の方法でありとあらゆる手段、国際的な連携をしなければならない。
そして拉致問題を解決するために、安倍総理は20数年間、国会議員になる前から、有本明弘さんのお嬢さん、有本恵子さんの話を、当時の安倍晋太郎外務大臣の秘書官として初めて話を聞いた。そしてこの時、「これは単なる誘拐ではないよ。国家主権の侵害、テロなんだ」という思いを抱いて、ずっとこの問題に取り組んでいるんです。
だから私も、この安倍内閣で解決できなければ、ほかの内閣では絶対に解決することはできないという立場で、現在自由民主党の拉致問題対策本部長として取り組んでいます。
私たちはそこにいる塚田一郎事務局長、彼は寄居中学校の出身で横田めぐみさんの1年先輩で、拉致をされた時に新潟県始まって以来の大捜査をしたことなど、子ども心にしっかりと記憶に残っている。だから彼はこの拉致問題は、自らのことのように頑張っている。
そして、私は塚田事務局長を座長に指名して案を作り、7月4日の期限を迎える6月25に、総理官邸に申入れに行きました。それは13項目の制裁強化です。実現が可能で、効果のあるものは全部網羅しました。
10数回にわたる役員会や幹部会議、あらゆるセクターからのヒアリングを含めてやりました。いくつかの象徴的なことを申し上げます。
まず、今までに解除した制裁は全部復活させる。これは当たり前です。それから、北朝鮮を渡航先とした人間が再入国できない仕組みです。今は極めて限定されていますが、朝鮮総連の中央常任委員が17名います。中央委員会の委員が500名くらいいます。明確なリストはない。さらに核・ミサイルに関与したと思われる技術者の再入国を禁止する。これはすごく効きます。
2つ目は、北朝鮮への送金の全面禁止。人道的な10万円までの送金は別として、10万円以上はすべて禁止とします。これを世界でやっている国が1つあります。カナダなんです。カナダは人権問題を非常に大切にします。
私たちも色々調べました。実効性を高めるのはインテリジェンスの部分だから、カナダも開示はしていません。送金というのは、北朝鮮と日本の銀行でコルレスを開いているのは一行もありませんが三国経由でいっぱいあります。
こういうものを国際機関を通じて、しっかり情報を取ってやっていく。かつてのバンコ・デルタ・アジアには金正日の秘密口座がありました。みんなに金を配っていました。その口座をアメリカがたまたま見つけて、そこを封鎖しただけで猛烈に効いたんです。だから私たちは、個人名や銀行名を徹底的に調べることも要請に入れました。
それから、北朝鮮に入港したすべての船舶に厳格なチェックを海上保安庁に責任を持ってやらせることです。よく便宜置籍船、FOC船と言います。便宜的によその国の船籍にしていますが実質的に北朝鮮の船がいっぱいあります。こういうものも全部チェックの対象にしていく。
あるいは朝鮮総連に厳格な法執行をさせる。RCC(整理回収機構)は回収をしなければいけない。少しでも例えばまた貸し、また借りをしてその資金があるのなら、その資金の出所はどこかを徹底的にチェックすることによって厳格な法執行ができるはずです。
その他にも朝鮮学校に対して、本当に減りましたが、一部の地方公共団体はまだ支援しています。主体思想を教えていますが、日本の教育指導要領に入っていない、あるいは反するものを教えているんですから、こんなところに渡す必要はない。しかし、地方公共団体には自主性があるので、このことも徹底的に指導していくことも入れました。
その他にも、例えば先ほどアメリカのことを言いましたが、アメリカには拉致された可能性のある人間が一人いるんです。2004年にデヴィッド・スネドンという人が行方不明になっています。私は3月3日に、1泊3日の強行軍でアメリカに行って、向こうの上下両院議員、それも共和党の議員と会ってきました。
なぜか。国務省にこの問題を言っても、のれんに腕押しなんです。だったら議会から圧力をかけていく。かつて日本で、政府認定が遅れた時に、議会から猛烈な圧力をかけて政府が認めるようになったじゃないですか。同じことをアメリカでもさせていただきました。
特にアメリカは、上下両院とも共和党、野党が過半数を握っているんです。そこで共和党議員を中心に、デヴィッド・スネドンはユタ州出身ですから、そこの議員たちにお願いをしてきました。デヴィッド・スネドンの問題、そして日本人の拉致問題を含めて、しっかり上下両院で決議をしてほしい。
この決議ができれば、アメリカの世論は大きく変わります。さっき言ったように、自国の国民が拉致をされているなら軍隊を出して取り戻してこいというのがアメリカの精神文化です。そういうことがアメリカとの真の連携につながるんです。
横田めぐみさんのご夫妻は2回も大統領と会っています。ブッシュ大統領、オバマ大統領。私は両方とも言っています。オバマ大統領の時は同席しました。「非常に理解する。同情する」という話がありましたが、真剣に一緒にやろうという覚悟は、感じ取ることができませんでした。
なぜか。簡単な話ですよ。自国民が拉致されたと認定されていないからです。だったらそれもしっかりやろうということを、決議の中に入れました。
これはこれから協議を進めていくための有力なツール(道具)として、総理、政府に提供しました。安倍総理は、すべてこういったことは承知の上で、このツールをどうやって拉致問題を解決するために活用していくかを今真剣に考えていると思います。
私は総理を信じたいと思います。なぜか。20何年間に渡って、この問題に取り組んできたことがあり、総理のお気持ちは本当に分かるからです。だから私たちはそういう取り組みを是非しっかりやっていきたい。
今日は平沼議連会長からもお話がありました政府・与野党拉致問題連絡協議会が今月末になると思います。また国会日程が決まっていません。各政党からしっかりと意見を総理に伝えて、総理に最後までいていただいてしっかり議論を聞いていただく。そして今後の有力な判断材料にしていただくことが必要だと思います。
「拉致問題を解決しなければ北朝鮮は未来を描くことはできない」。それをどうやって実践していくかということです。それは(金正恩の)取り巻きが分かっただけではだめなんです。あの金正恩という男は、気まぐれ男ですから、突然進言なんかすると次の日にはリンチされてしまう。ハチャメチャな組織です。
だけどそこと協議をせざるをえない苦しさがある。だからこそ私たちは、先ほど山谷大臣が言ったように、ありとあらゆる手段を尽くしてやっています。もちろん水面下の話もあります。水面下の話が表に出てきたら、水面下になりません。これは私たちを信頼していただきたいと思います。
何とか我々のこの手で横田めぐみさんを初め、北朝鮮に拉致された被害者全員を取り戻すために徹底的に戦い抜きたいと思います。引き続き私たちの背中を押してください。宜しくお願いいたします(拍手)。
櫻井よしこ
どうもありがとうございました。次に民主党の拉致問題対策本部長代行の松原仁さん、宜しくお願いいたします(拍手)。