北朝鮮はどう動くか-東京連続集会87 全報告
◆北朝鮮代表は拉致に言及せず
飯塚耕一郎(田口八重子さん長男) 他のパネラーの方の発言です。既に述べたような事前の打ち合わせがあり、
その後パネルディスカッションになりました。モデレーターとしてマイケル・カービーさん。理事会の中での発言をコントロールするためのモデラーです。
パネラーは、マルズキ・ダルスマン国連北朝鮮人権状況特別報告者。マルズキさんは去年訪日して、私は参加できなかったのですが、家族会から拉致問題についてヒアリングをしていただいた方です。
そしてデビッド・ホークさん。主に北朝鮮の政治犯収容所関連の専門家で、著書も出しています。次に私と、韓国のICNK(北朝鮮における人道に対する罪を止める国際的な連合)のクォン・ウンギョンさん。クォンさんは北朝鮮の全般的な人権状況の話をしました。
各パネラーが5分ずつ話をして、その後北朝鮮が発言、アメリカと石川事務局長の発言、それに続いて各国が発言しました。そこまでで約1時間。そして発言に対するパネラーの回答、再び各国の発言、一国につき2分ずつ話し、最後にパネラーが発言し、マイケル・カービーさんが全体をまとめました。
私は北朝鮮の様々な人権問題については述べず、今日の資料に私が発表した原稿の全文がありますが、拉致問題について話をしました。土日を使って7回校正をし、シンプルで、どなたであれ通じるような発言にしようと思いました。
当時1歳の私が37年という長い月日を、母親と話したことも、触れたこともない記憶について、そして拉致された彼女、田口八重子さんは、2002年9月に「死亡」として扱われた事実について、またそれが嘘であったことについての説明、さらに北朝鮮が不誠実な行動をとっていること、私は今でも彼女が北朝鮮に生きており、救出を待っていることについて話しました。
また、このような被害者が、日本には私だけでなく政府認定だけでも17名で、そのうち5名は帰国したが12名が帰国していないこと、また死亡を裏付けるものが何もないこと、横田めぐみさんのように13歳という信じられない若さで拉致されたケースがあるということ、その他日本だけで数百名ものの拉致の可能性がある人がいるということ、さらに韓国、タイ、ルーマニア、レバノン等の国民が拉致された可能性があること、またCOI(国連調査委員会)の報告では、それ以外にマレーシア、シンガポール、フランス、オランダ、中国にも拉致被害者がいるということ、つまりグローバルに拉致被害者がいることを主張しました。
日本では拉致されてから30年以上経っており、家族が再会を果たせぬままこの世を去っていること、時間をかけていい問題ではないことを主張しました。
私の発言要旨に関して各国から具体的な言及は特になかったのですが、事前の打ち合わせも含めて、カービーさんは、「私はあなたのお母さんをリスペクト(尊敬)する、何としても救おう。また北朝鮮によりありとあらゆる人権を蹂躙されたことにつき早くアクションを起こそう」とのことでした。
北朝鮮の発言ですが、拉致についての発言はありませんでした。「今回のパネルディスカッションは人権問題を軸に北朝鮮を崩壊させようとする意図がある。北朝鮮はそんなことでは揺るがない」と。また、人権理事会は無くなった方がいいというか、論議する価値はないと、北朝鮮の国連の代表者から発言がありました。
また彼らのワンパターンですが、日本は第二次大戦で北朝鮮を含むアジア各国に対して色々な人権問題を起こしたのではないかという趣旨の発言がありました。これについては、石川事務局長がものすごくうまい切り返しをして、「日本は、平和、民主主義、基本的人権、法の支配を重んじてきた国家だと述べ、拉致被害者が一刻も早く帰るべきことは日本国民の総意であり国会の意思である。拉致問題の解決を含む北朝鮮の人権状況の改善について具体的な動きを求める」という趣旨の発言がありました。
各国の主張は、北朝鮮の人権問題については、議論をして具体的な施策をしていくべきだという主張が6割、7割くらいありました。懸念を表明するような発言もありました。北朝鮮と同様に、パネルに関して価値があるのか、意味があるのか、続ける理由があるのかと、キューバ、ロシア、シリア、ベネズエラ、イラン、ベラルーシ、ラオス、ミャンマーが批判的な姿勢でした。
しかし、それほど強い批判ではなかったと思います。人権理事会に批判をせざるを得ないような印象を受ける発言だったと思います。それらの発言の後、パネラーの私が一番主張したかったのは、拉致問題も、強制収容所等で人権被害にあわれている方々に対しても同様ですが、「これ以上時間をかけるべきではない。早急に解決、救出を行うべきだ」という発言をしました。