北朝鮮はどう動くか-東京連続集会87 全報告
◆人権からのアプローチは意味があるし、効果的
西岡 耕一郎さんが退席されましたので拓也さんに聞きますが、人権理事会のパネルディスカッションの雰囲気はどうでしたか。ちょっとだけ話がありましたが、北朝鮮が発言する時は「また言ってる」という雰囲気があったということでしたが、それ以外、例えば耕一郎さんが発言した時、石川事務局長が発言する時の雰囲気はどうでしたか。
横田 私自身も、人権理事会の大きな会議室に入ったのは初めてで、社会科の本で見るような風景の中でした。
西岡 4人のパネリストが前にいて、司会がいた。向こう側には多くの代表のブースがあったのですか。
横田 私たちの右手に各国のブースがあって、前方にパネリストがいるという状況でした。北朝鮮のブースは向かい側にあったので、直接どこにいたかは分からないのですが、パネラーの上に大きなディスプレイがあり、そこに各国が発言すると自動的に映像が映ります。北朝鮮の外交官がしゃべると、この人がしゃべっているのかということを皆さんが分かる仕組みになっています。
パネラーの発言後、日本政府がほぼ先頭で発言し、続いてEU、アイルランドといった順番でした。
西岡 パネラーの後に北朝鮮が発言したのですね。そして耕一郎さんはアメリカが発言して、日本ということでしたが。
横田 順番まで細かく覚えていませんが、日本が優先的に発言をして、その後各国が発言し、大方が賛成で、中にはキューバ、シリア、ロシアといったような国々が、そういうことに首を突っ込んでほしくないとか、反対ですと、日本とは違う意見を述べていました。
西岡 その反対というのも、北朝鮮が言う通り拉致問題は解決済みということでの反対ではなく、一国を対象とするこのようなパネルディスカッションをすることに反対だということですね。
横田 そうです。中国は日本のブースの目の前に座っていましたが、6者協議の重要性を述べて、日本の意見に批判的なものではなかったことを考えると、世界の場で北朝鮮寄りの賛同をしてしまうと、彼ら自身が非を認めることになってしまうので反対はしなかったということでしょう。
西岡 つまり、拉致問題を含む北朝鮮の人権問題に問題はないと言った国は北朝鮮以外になかったということですね。但し、一国を対象とするパネルディスカッションを国連がやることについては、自分がやられるかもしれない国は外交上反対したということがあった。
中国は、北朝鮮一国を対象とするパネルディスカッションの枠組でも北朝鮮を支援しなかったんですね。人権理事会で6者協議という核問題を出して、金正恩政権が核実験をするかもしれないと言われた時に、「やるな」という圧力をかけました。これも特異的なことだと思います。
そういう点でも、国際外交舞台で北朝鮮はかなり孤立しているということです。
横田 そう思います。実際に日本を初め多くの国々が、「問題は深刻である。日本の立場を支持する」と言ったことに対して、北朝鮮の意見の中心は、言われている人権問題をどうするという具体的なことは言わず、第二次大戦云々と過去の話で、今この人権理事会でみんなが問うている拉致問題については回答ができない。多くの国が日本を支持すると言っていることから考えると、また北朝鮮を支持する国は事実上なかったことを考えると、人権からのアプローチはとても意味があるし、効果的だと思います。