救う会全国協議会

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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

北朝鮮はどう動くか-東京連続集会87 全報告



◆北朝鮮側を弁護する国は事実上なかったことが確認された


西岡 もう一つ聞きたいのは、パネルディスカッションでの各国の発言、北朝鮮の問題点を指摘する発言についてです。北朝鮮の人権問題は大きく分けて2種類あります。北朝鮮内部で起きている、北朝鮮人民に対する人権侵害と、海外の外国人に対する主として拉致の人権侵害です。COIの報告書には両方書いてあり、今回のディスカッションも両方がテーマになっています。
 その扱われる比率はどのくらいでしたか。拉致に関する発言がどのくらいありましたか。
横田 パネラーのデビッド・ホークさんは北朝鮮の強制収容所について語り、各国は2分の持ち時間ですから、細かいところから順序立てて、これだから賛成、反対と言えるわけではなく、司会が北朝鮮の人権問題は国内の問題だけでなく、世界に広がる問題でもあると言っていました。包括的に北朝鮮には人権問題があることが共有できたのではないかなと思います。
西岡 拉致も含まれているという前提ですね。というのは、ジュネーブで北朝鮮の人権問題が議論されてきた歴史は長いんです。もう10年以上前から特別報告者が任命されていて、人権理事会が人権委員会だった時から取り上げてきています。
 その主たる内容は、最初は強制収容所の問題、脱北者者問題が主でした。しかし、日本の外交努力や我々も繰り返し、増元さんや飯塚さんに行っていただいて、「人権問題は2種類ある。外国人に対しても人権侵害をしているんだ。世界規模で拉致が行われている」とアピールしたことで両方が取り上げられるようになりました。
 パネルディスカッションでのパネラー選びも、日本政府主催ではないですから、人権理事会が選んだパネラーの中に、日本の拉致家族が一人入ったということは、ある面で4分の1の割合になり、拉致問題についてもやるべきだという判断があるということです。我々の官民あげての努力が実ってきたのかなと思っています。
横田 そうだと思います。実際にパネルが始まる前や、私が参加したイベントまでの時間、終わった後、帰りの飛行場などの場で、例えばカービーさんは、「あなたのお母さんを覚えていますよ。元気にしていますか。応援しています」ということで、本当にありがたい話で、今回のパネルの中心的役割を果たした方々が完全に日本側に立っていると理解していいと思います。
 私たちと同じ立ち位置でこの問題を考えているから、「頑張って」とお声掛けしてくださったということが無形の力、支えになりました。
西岡 つまりカービーさんは、耕一郎さんには「田口八重子さんを取り戻しましょう」と言ってくれて、拓也さんには早紀江さんのことを、「あなたのお母さんを覚えていますよ」と言ってくれた。耕一郎さんのお母さんが拉致されたことを分かっているし、早紀江さんの娘が拓也さんのお姉さんだということも分かっていて声を掛けてくれたということですね。国際社会にかなり印象を与えることができつつあるということです。
横田 私は、ご承知の方も多いと思いますが、5月に日本政府主催で、ニューヨークで、人権問題を中心としたディスカッションに参加してきて、日本政府のイベントでは北朝鮮側が表立った暴れ方はしなかったんですが、その少し前に当時の山谷大臣を誹謗中傷したり、違うイベントでは会場に押し入って妨害行為を働いたりとしています。
 この国連のイベントや人権を軸とした活動に関して、ものすごくナーバスになっているのだろうということがよく分かります。そのことを踏まえて、今回私たちも、国連ジュネーブの場で、この問題に力をふりしぼり切るぞという覚悟が、これは耕一郎さんも同じだと思いますが、これが必要で、耕一郎さんが記者会見のことで言いましたが、北朝鮮の人間が聞いていたと言います。バッジを付けていたそうです。だから意識はしているし、効果が出ていると思います。
 形を変え、頻度を多くしながら、この問題に関して日本政府がハンドリングをして、もっと強烈にアプローチしてもらえればなと思いました。
西岡 次にNGOのイベントについてお聞きしたいんですが、主催はヒューマン・ライト・ウォッチ等だと思います。そこで印象的だったのは、これはタイに住んでいる海老原さんのグループが大きいんですが、タイのアノーチャーさんの甥であるバンジョン・パンジョイさんが来て発言し、ルーマニアのドイナ・ブンベアさんの弟さんは都合で来られなかったけれども、文書を海老原さんが代読しました。
 我々と連携している日本、韓国以外の拉致被害者の声も届けられた。もちろん韓国からも拉致被害者が来て、そういう点では拉致問題が世界的な規模であって、北朝鮮の人権問題の中で大きな位置を占めていることをアピールできた。それ以外にも人権問題はたくさんありますが、自国民を弾圧する政権は外に対しても侵略し、テロをするという表れだと思います。
 それが両方取り上げられました。サイドイベントはこれまでたくさん行われてきましたが、北朝鮮の人権問題は、国内のことについては脱北者の活動家たちが盛んに一生懸命やってきました。それも貴重な努力で実ってきたと思います。拉致問題も、日朝の問題だけでなく、世界対北朝鮮の問題だという認識がかなり広がってきたと思いますがどうですか。
横田 私が参加したイベントの前に、別室で海老原さんやパンジョイさんと一緒になる時間があったのですが、その時、「日本政府が羨ましい。これだけ国を挙げて集会で声を上げてくれて、またここでも政府が発言する機会があっていいよね」と。「タイではなかなかこの問題が認知されていない面がある」ということでした。自分の時間を割いて、第三者のために運動するというのはすごいことだと思いましたし、自分ではまねができないことだと思いました。
 改めて、壇上で私の隣に海老原さんがいたという話を聞いていると、日本の被害者家族の方々が、解決していないことを深刻に語ることとは内容が違う面がありますが、同じ立ち位置、同じ苦しみで話されていて、この問題のむごさ、深刻なんだなということを、私自身も肌で感じました。
西岡 NGOのイベントでは、映像を流したんですか。
横田 はい。各国、各参加者が持ち寄っているものは自由ですので、静止画で写真が何枚か写っているものもあれば、日本は私の母が1分間くらい話をしている動画が写されて、その後に私が話をさせてもらいました。そういう意味では、外交官の方々がけっこうリアリティを持って見ていたんじゃないかと思います。
西岡 この前日本政府が作った、家族の訴えのビデオからとられたものですか。
横田 そうです。
西岡 政府の対策本部のホームページから見ることができると聞いていますが、その中の早紀江さんの部分を使ったということですね。
 今強調されましたように、国際社会の中で北朝鮮の人権問題が重大な問題である、早急に解決しなければいけないという気運が高まっている。北朝鮮の人権問題の中に、日本人を含む外国人が不当に拉致され、抑留されている人も含まれている。そういう認識が国際社会、特に国連を構成する多くの国の外交官の間でも広がっていて、北朝鮮側を弁護する国は事実上なかった、ということが確認されたという点で大きな意味があったと思います。
横田 冒頭のことを繰り返し申し上げると、最後のイベントのクロージングのところで、カービーさんが発言されたところですが、「(被害者家族である)当事者が生の声を伝えたことは、とても貴重な経験であった」ということに加えて、耕一郎さんも言ったように、「国際社会が取り組むべき施策を列挙したショッピング・リストを作成する必要がある」ということ、そして最後に「安保理で議題化されて議論が行われてから1年が経とうとしている今、今後の安保理の活動にも期待したい」とおっしゃっていました。
 この点で、日本政府がどのように国連安保理に対して加担していくのかを私たちは見守りたいと思います(拍手)。


  
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