国際セミナー「日朝拉致協議をどう打開するか」報告
◆【参考】高忠義氏の提言書全文
朝鮮総連は結成以来、在日同胞の権益擁護や民族教育において多大な業績を上げてきました。そして共和国の大使館的役割と、国交のない朝日両政府のほとんど唯一とも言えるパイプとしての役割は貴重なものです。
青春の時期、実家の破産により引き取っていた妹の朝鮮高校卒業と同時に、当時の全財産を注ぎ込んでその活動家として過ごしてきた私ですが、最近の組織の衰退ぶりには目を覆うものがあります。元来在日同胞の意思を結集する総連組織は、共和国の言いなりになる下部組織ではなかったはずです。
初代議長韓徳銖氏が亡くなった時、不謹慎ながら、これで少しは総連も変わるのではないかと期待を持った在日同胞も少なくなかったはずです。
しかしその後を継いだ徐萬述氏は結局ほとんど何も出来ず、現在に至っては言わずもがなです。
朝鮮総連が真の在日同胞の民主的な組織として活動していくために、共和国とのパイプ役を維持しながらも、次のことを実現されるよう提言いたします。
1、金日成、金正日の肖像画をすべての機関から、撤収すること。
2、日本人拉致被害者全員の解放、及び帰国同胞と日本人配偶者の自由往来の実現。
3、総連組織綱領に、結成時の八大綱領にあった核兵器禁止項目の復活。
4、朝銀を通して消えてしまった在日同胞の莫大な財産の行方と、その責任を明らかにする。
5、組織幹部は朝鮮労働党の党籍を離脱すること、または党員でないものが就任すること。(党員が党の指示に従うのは当然だからです)
なぜ、このような提言に至ったか、お話します。
このままここで黙っていれば、純真な同族愛と清貧な生活のなかで民族活動を行ってきた多くの活動家と在日同胞の努力が無に帰すのではないかと思われるからです。自分のことしか考えない者のためにどれほど多くの帰国者、人民が苦しんでいることか。そして犠牲になったことか。
世界の国の中には痛烈な経験から、憲法で指導者の個人崇拝を禁止した国もあると聞きます。(池上彰氏の憲法に関するテレビ講座で聞きました)
歴史的事実と科学的根拠のない神話で成り立ったものは、宗教です。
信教の自由も布教の自由もあります。しかしそれは自分の家で肖像画を掲げて崇拝するもので、政治と関わらせることは絶対に間違っています。総連が在日同胞の民主的組織として進んでいくのであれば、これは絶対に譲れない項目です。
私が組織活動家の時、宿直のたびにピョンヤン放送、ソウル放送、NHK、VOA(アメリカの声)、北京、モスクワの短波の各朝鮮語放送を聞いて過ごしました。そこで一つの事項の捉え方の違いを数々感じました。
「金日成著作選集」の五巻のすべてを読みました。この本は自己矛盾に満ちていました。
例えば、自分に敵対する勢力を非難するのに「偶然分子」という言葉が出てきました。能力も資質もないのに現在の地位にたまたまついている連中という意味です。
これを読んだとき、「おいおい、あなたが最大の偶然分子ではありませんか」と思ったものです。
今のような共和国にしてしまったのには、金日成の罪が重いです。
金日成氏は、自分の生存中に銅像を立てさせ、肖像画を普及し、後継者の世襲までしました。
金日成氏は、ほとんどの分野で素人であるにもかかわらず、全国津々浦々「現地指導」の名のもとに、自分が言った方法でしか仕事ができなくしてしまいました。罪深いことに、全国を回って無茶苦茶にしていったのです。自分の地位を守るために。
崇拝、神格化に関して私が経験したことを二例、述べます。
私が広島で活動していた頃、ある女子学園に在籍する在日学生を指導した時のことです。
クラスでただ一人の在日学生だったこの女子高生(後に朝鮮大学に進学)が私たちの指導で民族に目覚め、級友に働きかけて広島歌舞団の指導による朝鮮舞踊を、全員がチマチョゴリを着て文化祭で披露したのです。
このことは日本の新聞にも取り上げられました。
その後、ピョンヤン新聞に掲載された記事を見ました。そこにはこの事実を記した最後に、「非常に感激した学父兄たちは一斉に立ち上がり、涙を流しながら金日成元帥万歳と叫びました」とあり得ないことが書かれていたのです。
もう一つ、
私が広島県西広島支部宣伝部長の時、軍事独裁政権で高校生時代の活動仲間だった徐勝氏らが囚われていた韓国に行き、ソウルで朴正煕大統領の非人同性について、各界名士の前で糾弾演鋭をして強制送還された後のことです。
この総連は全国各所で、「広島のある愛国青年が、ソウルの各界名士の前で金日成元帥万歳と叫んだ」と喧伝していたのです。
決してそんなことはありません。本人の私が言うのですから間違いありません。
1968年「プラハの春」の時。
人間機関車と呼ばれたマラソン選手のザトペック氏や、東京オリンピックで人気を博した体操選手のチャスラフスカ氏たちが「二千語宣言」を著して自由を求めた事件です。
私はラジオで刻々伝わる、ワルシャワ協定軍に抵抗するチェコスロバキアの市民たちの戦いの様子を聞いていて、いてもたってもいられませんでした。
それは、伊藤博文が軍事力を背景にして、我が祖国を日本に隷属させた屈辱の歴史を思い出したからです。
少しして、金日成はこの当時のソ連の弾圧を支持する声明を出しました。
天安門事件の時。
自由と民主主義と平和を求める青年たちの多数が虐殺された事件です。
金日成はこの時も、中国政府の弾圧行為に支持声明を出しました。
どこが民族の太陽ですか? ただ、自由と民主主義を求める民衆を力で押さえつける勢力を支持し、自分の保身を第一に考える者を、どうして敬愛することができますか?
おかしいことをおかしいと言えないのはどうしてですか? それは自分が可愛いからです。それによって、多くの人民が苦しんでいようが関係なく、自分が可愛いのです。
バカでない限り、おかしいことはおかしいと感じるはずです。
私自身若い頃、それを感じながらも決定的には指摘できませんでした。その自戒を込めてこの提言書を書いています。
最近、とんでもないことを聞きました。
日本のテレビに共和国の実情が少しずつ映像として流れるようになりました。悲惨なものもありました。それをある総連系婦人は「今の時代CGで何とでも映像を作れる」と言ったのです。もうここまで来ると、あいた口がふさがりません。
在日同胞の代弁者として、堂々と共和国政府におかしいことはおかしいと指摘してください。朝日両政府のパイプ役としての総連は共和国にとっても貴重なものです。勇気を奮うべきです。
ご意見をお寄せください。組織の当事者はご返答ください。
これ以上、朝鮮人民と世界の平和に対して罪を重ねないようにお願いします。
私の意見が間違いだと指摘され、私がそれを理解できたら、私の考えを改めましょう。
私の意見が正しく、あなたの意見が間違っているならば、あなたが考えを改めてください。それだけのことです。「間違いをあらたむること憚るなかれ」との言葉もあります。
島田 大変明解なお話、ありがとうございました。総連中央からまだ返答がないということですが、返答してもらいたいと思いますし、朝鮮総連に迎合してきた福島瑞穂さんを筆頭とする政治家にも、是非メディアの方々から取材してほしいと思います。
続いて、「北朝鮮の独裁と核・ミサイル開発を支える総連」というテーマで、西岡力・救う会会長にお願いします。