拉致も理由に北朝鮮に強力な制裁を?緊急集会報告
◆まず平壌宣言の破棄を、国交正常化の前に被害者の救出を政府の方針に
中山恭子(元拉致問題担当大臣、日本のこころを大切にする党拉致問題対策本部長、参議院議員)
今の西岡さんお話を、そのまま続けてお話したいと思います。2002年に、拉致被害者家族担当ということで内閣官房参与を務めました。そして9月17日に、平壌宣言というものが出されました。この平壌宣言には「拉致」という単語は全くありません。日朝国交正常化をするための宣言でした。
その後、2006年に第一次安倍内閣ができました。それまではもっぱら拉致問題を専門的に担当する部署が政府の中に必要ですと、家族担当ではなかなかものが言えなかったということもありまして、拉致問題を専門に担当する部署を作りたいということをずっと言っていました。
そして、第一次安倍内閣ができたその日、拉致問題を専門に担当する部署を作ろうとおっしゃってくださいまして、構想はすべてできていましたので、2006年9月26日に(総理大臣補佐官を)拝命し、本当に突貫工事で、当時対策本部に来ていただいていた各省庁の方々が、徹夜続きで準備し、29日金曜日の閣議で決定して対策本部ができました。この時初めて、拉致問題を専門に扱う部署が政府の中にできた時でした。
その後に北朝鮮が核実験を行いました。安倍総理が韓国を訪問するという時に合せるような形で核実験を行いました。この段階で私たちは、平壌宣言を破棄すべきであるという主張をしましたが、なかなか思うようにできなくて、平壌宣言がそのまま続きました。
そして2年前、2014年の5月29日に、平壌宣言にのっとって事を進めるというストックホルム合意ができました。私自身は2年前の2014年が始まった時、この年こそ被害者を帰国させるチャンスだと考えていました。
政府の中でも、拉致対策本部でも、一緒に動いてくれているという様子もあったものですから、2014年こそ被害者を救出できるかもしれないと期待して、その年が始まりましたが、なんとその年の5月29日、ストックホルム合意というものが発表されました。
読み始めてびっくりしました。これは拉致被害者を救出するための合意ではありませんでした。あの合意では拉致被害者は一人も帰国できない、させるつもりもない、そういう合意であることがあの文書を読めば明らかでした。
それでびっくりして、今年こそがチャンスの年なのに、なぜこんな合意を結んだのか。何とも言えない情けなさと、悲しさを感じ、一刻も一日も無駄にしたくないこの2014年の時が無駄に流れてきて、しかも今後も無駄な時が流れるであろうと、ストックホルム合意はそのことを示していました。本当に残念な合意でした。
5月29日の発表の後、6月1日に国民大集会がありましたので、会場は浮かれた感じでしたが、ここだけはしっかりお伝えしなければならないという思いで、このストックホルム合意では被害者は一人も帰国できませんということをお伝えしました。
なぜかと言われると説明が長くなりますが、この合意は被害者を救出することが政府の大事な目的になっているのか、北朝鮮と日本との間で国交正常化をすることが国の大きな政策なのか。足の置き場所ですが、どちらに傾いているのかということを明確に示す動きです。
拉致被害者救出ということを日朝国交正常化の前に行うということが、はっきりと政府の方針で出ていれば、あのような合意はけっしてないはずです。
従って、平壌宣言もストックホルム合意も、もっとはっきり言えば、政府の中の方々がそこまで意識していたかどうかは別にして、あの二つの宣言と合意は、拉致被害者が犠牲になっても致し方ない、日朝国交正常化の方が日本としては大事な仕事なのだということを意味しているのです。
担当者がそういう思いでやったとは思いませんが、そういう結果をもたらすのが平壌宣言であり、ストックホルム合意です。
そしてもちろん帰ってきません。あの合意がある以上帰ってきません。ですから松原先生がおっしゃったように、この二つをどのようにしたらいいのかは色々やり方があると思います。無視するのか、破棄とはっきり言うのか。核実験をやっているわけですから、両方とも反していますので、理由はつけられますから破棄とはっきり言っていいと思いますが、2国間の関係で簡単に破棄と言えないというのであれば、無視するとか色々なやり方があるはずです。
先ほど加藤大臣が、「対話の窓口を閉じない」とおっしゃいました。これは非常に巧妙な言葉です。ずっと以前からこの言葉は使われています。これは戦略と戦術をまぜこぜにした単語です。
北朝鮮の外務省は全く力を持っていませんから、北朝鮮外務省と交渉して何かを結んでも、拉致被害者を帰国させることは決してないと言っても過言ではないと思っていますが、そのつながりは一旦止めてもらって、これが止まらない限り北朝鮮国内で出先が外務省で続くんです。
それ以外の人と交渉しないと、被害者救出はできません。これは私自身の経験からです。日本の外務省は強いかもしれませんが、北朝鮮の外務省は全く力を持っていませんから、このルートが止まれば、北朝鮮と別ルートで交渉ができます。止まらない限り別のルートは出てきません。経験上はっきり言うことができます。
外務省ルートを止めるということと、北朝鮮と日本の対話の窓口を止めるということは全く違う問題です。外務省ルートを閉じても、北朝鮮と日本との対話の窓口はもっと深い形で続きます。
従って、外務省同士のルートを閉じて、被害者救出のルートを作りましょうということをずっと言い続けています。そのためには、加藤大臣を中心にした拉致対策本部と北朝鮮との、もっと金正恩グループに近い人たちとの話し合いをする必要があると思います。拉致対策本部にもっと頑張ってもらいたい。
もう情報の予算もついています。あまり多くありませんが。独自の情報も持てるはずですから、外務省の方はほっといて、拉致対策本部と北朝鮮との直接の交渉ルート、対話の窓口を開いてほしい。外務省ルートを閉じても、必ず対話の窓口はつながります。
拉致対策本部と北朝鮮とで物事を進めない限り、被害者の救出はありません。従って、先ほど松原先生がおっしゃったように、平壌宣言とストックホルム合意は破棄するか、破棄できないのであれば無視して、新しいルートを作って、被害者救出に集中した、それだけの交渉を進めることが必要だろうと思っています。
2年前には可能性があると思っていましたが、残念ながらできませんでした。今年はある意味でチャンスがあると考えています。大臣と拉致対策本部に期待します。この2年間、本当に無駄な時間が流れました。それぞれの人々に色々な変化があります。一日も無駄にできないような状況になっています。
いつも皆様にご支援いただいていることに感謝します。政府が動くには皆様のご支援が必要です。これがなければ政府は動きづらい、動けません。
安倍総理は私は信用しています。必ず被害者を救出するとお考えのはずです。ですから、安倍政権そのものも、2年前ストックホルム合意ができた後10月になってやっと、衛藤晟一補佐官や安倍総理の指示のもとで日本にとっての最重要課題は拉致問題ですが、10月になってやっとそれを外務省が(北朝鮮に)伝えに言っているんです。
あまりにも情けない状況が続きました。2014年も、2015年もその流れが続いて今になっています。この年こそはっきりと、加藤大臣が専担で見てくださる拉致対策本部に、外務省からも人が入っていますし、警察からも優れた人々が集まっています。なんとしても集中した形で救出に当たっていただきたい。この時期をのがしたら非常に難しくなると思っています。どうぞ心から大臣にお願いします。期待しています。
もう一つ、北朝鮮が不安定な状況になった時、自衛隊が救出に入れないだろうか。その地域を支配している国の同意がなければ動けないという規定がまだ残っています。北朝鮮を国家と認めるかどうかによっても、少し違う形の動きができるかもしれないけれど、なかなか表だって北朝鮮に自衛隊が救出に入ることができない状態です。
できれば拉致問題に絡んで、これも何文字か入れれば動けるようになりますので、これも頭の隅に置いていただきたいと思っています。宜しくお願いいたします(拍手)。