東京連続集会89 最終決戦は続いている 制裁強化と国際連携の圧力で全被害者を救出しよう
◆スネドン議案の関係者とこれから
島田洋一・救う会副会長(福井県立大学教授)
訪米報告についての配布資料をご覧ください。デヴィド・スネドンさんは2004年8月に中国雲南省で失踪した青年で、当時24歳でした。様々の状況証拠と極秘の情報からして、彼は中国内で脱北者支援をする人権活動家と疑われて北朝鮮側に拉致されたものと思われます。ついでに、英語教師として使おうと北朝鮮が考えたかもしれません。
このスネドンさんの家族は何回も日本に来られて、古屋元大臣に対してもそうですが、我々救う会や家族会に対しても、自分たちの息子、兄弟を取り戻したい、と。拉致問題については日本は知識があり、最も真剣に取り組んでいるから、是非日本からアメリカに対して働きかけてくれないかという依頼を受けてきました。
また非常にまじめなご家族なので、私個人としても、何とかスネドンさんを取り戻したいとの強い思いを持っています。従って、アメリカに当事者意識を持ってもらうことが戦略的にも極めて大事なんですが、同時にスネドンさんを日本の被害者とともに早く解放させなければならないという思いがあって、こういう決議案を受けて動いているということです。
今回の訪米についての簡単な補足ですが、面会者リストの中のビリー・ロング下院議員とダイアナ・デゲット下院議員は、米議会日本研究グループ訪日議員団として毎年日本を訪れ、外務大臣初め関係者と懇談していますが、両者は共同議長を務めている民主・共和両党のトップです。いわば親日人脈を通じて賛同者を増やそうという趣旨で会いました。
デゲット下院議員は、古屋さんが言われた通り、ナンシ・ペロシ院内総務と大変親しい関係にある点も重要だと思います。
24日に会ったクローディア・ロゼット、シャノン・ティエッジの二人は非常にしっかりしたジャーナリストで、ロゼットさんというのは、国連の不正、欺瞞、機能不全等を鋭く追及することで国際的に知られています。
アナン前国連事務総長が、追われるように辞めましたが、あのアナン氏の長男等が絡んだイラクの石油不正輸出事件を最初に追及したのはロゼットさんで、注目を浴びているジャーナリストです。
ティエッジは「ディプロマット」誌編集主幹で外交が専門です。ネット配信もしています。外国に影響力があります。この二人のインタビューを長い時間に渡って古屋大臣が受けられ、近々記事が出ると思います。これを発信のツールとして日本政府なども使っていただきたいと思います。
25日の、ナンシー・ペロシさんは、下院の民主党の院内総務でトップの人です。こういう決議案は、民主・共和両党のコンセンサス、両党から賛同者が集まって、「誰も異議ありませんね」、「異議なし」という形で通すのが一番効率的だと、何人もの米議会に詳しい人たちが言っていました。
民主党側の賛同者を増やすと言う意味で大変重要な人です。実際に我々が会ったのは黒人の女性の補佐官ですが、「スネドン氏のケースについては既によく知っている」ということで、大いに動いてくれるのではないかという感触を持ちました。
ポール・ライアン下院議長。46歳で共和党の若手で、前回の大統領選挙で副大統領候補になった人。今の大統領選でも、共和党はかなり分裂状態ですが、7月の党大会の段階で誰も過半数を集められない場合、一からの投票になるのですが、その場合ポール・ライアン氏が共和党の候補としてかつがれるのではないかと言われている重要人物です。
これも黒人の男性補佐官に会いました。大変優秀なエネルギッシュな人で、大いに動いてくれると思います。
マルコ・ルビオ議員については先ほど古屋元大臣が言われた通りですが、非常に事務所の反応が早くて、既に(決議案の)共同提案者に名前を連ねています。
デブ・フィッシャー上院議員は、女性で、デブラを縮めてデブと呼ばれます。ネブラスカ州の議員です。スネドン家はユタ州とネブラスカ州に大変ゆかりが深いということで、両州の議員が当初共同提案者になっているんですが、そのうちの一人です。
この人はかなり早い段階でマルコ・ルビオ上院議員を大統領候補として指示するとの声明を出した保守本流の人です。
マイク・リー上院議員とは本人と会いました。上院側の決議案提出者ですが、アメリカの保守団体の投票行動の調査では、最も理念的保守として信頼できる議員のトップになっています。まだ45歳と若いんですが、本格保守のホープで法律家です。
デヴィン・ニューネス議員は、アメリカの議会で日本議連ができましたが、その共同議長をしばらく前までやってきた人です。親日人脈の一人で、現在情報特別委員長。スネドン決議案は上院では外交委員会に付託されていますが、下院では外交委員会と情報特別委員会に付託されています。早く処理が終わった方のルートで事が進むのだろうと思いますが、その委員長ということで重要人物です。
スティーブ・シャボット議員も外交委員会に所属していて、常に議員本人が会ってくれる人です。亡くなった中川昭一さんとも親しかった方です。親身になって拉致問題を考えてくれます。
クリス・スチュアート下院議員は決議案の下院側の提出者ですが、実はスチュアート議員の長男が、スネドンさんに、「自分も韓国、中国に留学したい」ということで、先輩としてスネドンさんから色々教えを受けていたという関係もあって、極めて熱心に取り組んでくれています。元空軍のパイロットで、日本に赴任していたこともあるという方です。
ベン・サス上院議員は45歳、若手で、ネブラスカ州選出で、共同提案者の一人です。実は数日前、「仮に共和党大会がトランプ氏を候補として指名しても、自分はトランプ氏を支持しない」という明確な宣言を、共和党議員として最初に出した人です。この人も本格的な保守で、注目されている若手の一人です。
こういう人たちに会ってきたんですが、感触としては、上院下院両方でこの決議案が通るというのが最も注目度、認知度が高まるし、いいことだと思いますが、上院の方は対立案件が色々あって、どうなるかかなり不透明です。だから下院の方でまず通って、上院の方はどうなるか、というようなことになるかも知れませんし、全く分かりません。両院が同じペースで進むとは限らない。私の感触では下院が早く進むのではと思いました。
例の慰安婦決議案が2007年に通りましたが、これは下院でしか通りませんでした。そういう意味ではどちらかの院を通るだけでも、インパクトはありますから行方を見守りたいと思っています。
あと1点だけ言えば、この間保守派の最高裁判事が亡くなって、その後任をどうするかで民主党・共和党がかなりもめているんですが、上院司法委員会のメンバーにこのマイク・リー上院議員が入っており、またオリン・ハッチというユタ州の上院議員、スネドン決議案の共同提案者ですが、この二人が司法委員会に入っています。
その意味で、マイク・リー上院議員が出した決議案が反発を買う恐れもありますが、この辺はどうなるのか全く分かりません。以上です。
西岡 島田さんに聞きたいことがあります。先ほど古屋先生も言及されましたが、制裁という観点からすると、米上院下院が法律を通し、オバマ大統領がサインした新しい北朝鮮制裁強化法ですが、これはどういう法律で、その法律の中に実は外国人拉致問題が明記されたと聞いているんですが、それについて解説してください。