北朝鮮最新情勢と救出への展望?東京連続集会90全報告
◆危なかった時期
西岡力(救う会会長、東京基督教大学教授) 日本のマスコミは国家保衛部が主導している、と。2002年の小泉訪朝の時、田中均局長はミスターXと言われる国家保衛部の幹部柳敬(リュ・ギョン)という男と交渉していた。その柳敬の下にいた人物が交渉に出ていたことが確認されているから、前回の交渉と相似形なので希望が持てる、というようなことを報道していました。
しかし、前回の交渉と相似形だというマスコミの報道は大誤報です。なぜなら、前回の交渉は小泉訪朝まで一切秘密にされていたからです。今回は、まだ被害者も帰ってきていないのに、秘密交渉の相手が誰だということが表に出るというのは、秘密交渉の常識からはずれています。
まとめる気が両者にあるなら、話は表に出ないんです。それなのに保衛部の誰がいたということで希望が高まり、そして日本経済新聞が「30人のリストがある。政府にもう届いている」という報道までして、期待値が上がったわけですが、逆に私たちはさっき言ったようなことから、返す気がないのに接近してきたと思いました。
接近してきたということは、制裁と国際連携が効いたということだと思いますが、返すという決断をしていないのに接近してきたということは、論理的に考えると、最悪のこともありえるということです。そして彼らは、その準備をしているという情報がある。
動きがなかったときは、なかった時でイライラしましたが、2年前は本当にピリピリしていました。まずは命を守らなければ救うことはできない。何が出てくるだろうか、何を考えているのだろうか。だから意図的に色々な所で書いたり、テレビでも、「我々は分かっていますよ。あなたたちが遺骨を捏造する実験をしたことも知っていますよ」と言いました。
情報源との関係もあるので、言えることと言えないことがありますが、なるべくはこちらが持っている札を、向こうが切ってくるまでは出したくなかったのですが、これは危ないと思っていました。
それからもう一つ言っていました。救う会は生存情報を持っている、と。だから遺骨が出てきたとしても、その遺骨の死亡時期を日本の技術では鑑定できるわけですが、それより前か、ごく近い時間までの生存情報がある人について、本物の遺骨がでてきたら殺したんだということになる。その瞬間に「殺したんだ」と叫びますよ、と。生存情報をオープンにして、「殺したんだ」と叫びますよ、と。
2年前の夏の終わりから秋の初めは、そういう緊張関係でした。去年になって状況が少し変わり、北朝鮮は「拉致についての調査はまだ終わっていない。それ以外の分科会の調査は終わった。報告書を先に受け取れ」と言ってきました。
しかし、安倍政権はそれを拒否した。「拉致問題が優先だ」と。先ほど言いましたように、金正恩は当初、拉致以外のもので日本の世論を拡散させた後、死んだということを出そうとしていたのではないかと私は推測していたんですが、まず拉致以外のものを先に出すことが始まった。去年の1月です。
外務省の局長や課長が一月に2回くらい、どこかで秘密交渉をしているとの報道がありました。これもおかしな話です。裏交渉がなぜ報道されるのだろうか、と思ってしまいます。どちらかがリークしているのか分かりませんが。
そういう中で様々なルートから聞いた話は、北朝鮮が拉致以外の分科会の調査が終わったので受け取れ、ということでした。ストックホルム合意の文面だけを読むと、4つの分科会が並行して調査を進め、随時報告すると書いてあります。
だから向こうは、「合意に書いてあるじゃないか」と言うわけです。しかしこちらは、「何を言っているんだ。遺骨は万の単位、日本人妻は千の単位、特定失踪者は多くても800とか900、認定被害者は12人だ。そっちが終わってないということがあるか」と。
「意図的に別の物を出そうとしているのではないか、最優先は拉致だ」と。ですから表の局長級協議は一度も開かれませんでした。一昨年は少なくとも4回開かれています。しかし、水面下で接触はされていた。