北朝鮮最新情勢と救出への展望?東京連続集会90全報告
■岸田外相も「被害者を帰国させよ」と要求
西岡力(救う会会長、東京基督教大学教授) その報告書には、「北朝鮮が行っている人権侵害は人道に対する罪だ」、「ナチス・ドイツやカンボジアのポル・ポトがやったことと同じだ」と。そして「国際社会は保護する責任がある」と書いた。
「保護する責任」という国際法上の概念は、今の第二次大戦後の国際法では内政不干渉が原則ですけれども、あまりにもひどい内政上の人権侵害があった場合は外国が武力干渉してもいい。ということです。旧ユーゴで「民族浄化」と言われる大虐殺が行われた時は、NATOが爆撃をしました。
まさに「保護する責任」で軍事行動をとったんです。きおれは国際法上違反とはなりませんでした。国連の北朝鮮人権調査委員会は、それと同じくらいひどいと言ったわけです。もちろん拉致だけじゃなく、北朝鮮内部で起きていることと両方含めてです。そして、責任者を国際刑事裁判所に訴追すべきだというのが出ました。
金正恩氏はこれまで何回も国連総会で北朝鮮に関する決議案が通りましたが、無視しました。しかし、「責任者を国際刑事裁判所に訴追すべきだ」とされた後は急に慌てました。そして北朝鮮も人権委員会という組織を作って分厚い白書を作りました。「北朝鮮に人権問題はない。あるのはアメリカと韓国だ」というものです。そして「脱北者は嘘つきだ」と言い、様々な例を挙げました。
拉致については、金正日が認めたこともあって『嘘だ』とは言えなかった。「拉致は日本と二国で話し合っている。国際化すべきではない」と。それなのに拉致を国連に持ち込んだ安倍政権はけしからん、と。
そういうことで去年4月2日に、「このままでは政府間対話ができなくなっている」と言いました。4月3日に安倍総理は家族会と会って、私は何を言うかなと思っていたんですが、「北朝鮮が拉致問題を解決しなければ彼らは未来を描くことが困難だと認識させなければいけない」と、報道もいるなかで言いました。
「対話はできない」と言ったら、「未来はない」と言い返した。そしてその後、まだ山谷大臣の時代でしたが、国連のニューヨークの本部に行って、その近くで国際セミナーをしました。
現在の加藤拉致問題担当大臣は、今月、アメリカのワシントンとニューヨークの国連本部で日本政府主催の国際人権セミナーをしました。
今回のセミナーでは、ワシントンでもニューヨークでも、日本の政府代表が言ったわけではありませんが、日本政府主催のセミナーで、ワシントンのセミナーでは韓国の李政勲(イ・ジョンフン)人権大使が、ニューヨークのセミナーではマルズキ・ダルスマン国連北朝鮮人権特別報告官が、「人権侵害がひどい。責任者を訴追する問題を真剣に検討すべきだ」という、北朝鮮が一番嫌がることを言いました。加藤大臣がいる前で。
そんなことをしていたら対話をしないぞと言われた後も、安倍政権は続けているわけです。大変な緊張関係です。
日本政府も去年の8月くらいから、岸田外務大臣がASEANの拡大外相会議で北朝鮮の外務大臣と会った時に、「被害者を帰国させよ」と要求しました。報告書だけではなく、「帰国」ということが外務大臣の口からも出て、その後繰り返し「帰国実現」ということが言われるようになりました。足並みが我々と揃いました。