北朝鮮最新情勢と救出への展望?東京連続集会90全報告
◆日本は北朝鮮が一番嫌がる対応をしてきた
西岡力(救う会会長、東京基督教大学教授) そして年が明けた。そしたら核実験があり、相次ぐミサイル発射の挑発があり、労働党の大会がありました。そういう中で国連では、核問題が主要な議題になり、また軍事緊張が主要な議題になって、安保理事会で制裁議論になりました。
2月に安倍政権は、国連の安保理事会の制裁の決定の前に独自制裁を決めました。韓国が同じ日の数時間前に、開城公団の操業停止を決めましたが、韓国の独自制裁決定はその後でした。だから日本が一番早く独自制裁を決定しました。
その中に、特別調査委員会ができた時に解除していた3つの制裁を元に戻しただけでなく、かなり厳しい制裁が発動されました。その内一つが、今日私が「産経新聞」の「正論」に書きました核・ミサイル技術者の北朝鮮を渡航先として再入国禁止が含まれています。
この話は後でしますが、朝鮮総連に対する厳しい対応と拉致の国際化をやめろと北朝鮮は言ったのですが、紆余曲折はありましたが方向としては続いています。総連本部の建物に彼らが居座っていることは悩ましいですし、本当にどうなっているのかと思いますが、しかし今までやらなかった核・ミサイル技術者の北朝鮮を渡航先として再入国禁止、5人ですが、そういうことがありました。
そして我々は核実験、ミサイル発射の時に、声明を出して、また政府に要請をして、当然厳しい制裁をすべきだ。その制裁の理由に拉致問題も入れてほしい、と。本来なら拉致問題だけで、特別調査委員会ができて1月で1年半になるのに、誰も帰ってきていないことを制裁の対象にすべきだという緊急集会を開催しました。
最終的に2月の安倍政権の制裁には、理由として拉致が明記されました。そして国連の安保理事会の制裁でも、拉致を明記するようにと強く求めました。自民党の対策本部の声明もそういうことになりましたし、国会の衆議院、参議院の決議にもそのことが入りました。
外務省もニューヨークで、今日本が非常任理事国ですから、かなり頑張ったようです。表現は我々からすると十分ではありませんが、「人道的問題への配慮」という文言が入り、日本の大使だけでなく、アメリカの大使も、「これは拉致問題を意味する」ということを安保理事会で話しています。
拉致を含む人権問題も理由になって、国際社会が制裁を強めた。日本もかなり制裁を強めた。北朝鮮が嫌がる国連に拉致問題を持ち込むことと、朝鮮総連に厳しい取り締まりをすることをしているという状況です。
しかし、一方で日本政府は、「対話の扉は閉じない」と。では北朝鮮はどうか。2月に安倍政権が制裁を発表した直後に、特別調査委員長の委員長談話というのを出しました。徐大河(ソ・デハ)という男です。
しかしその談話は全文が公開されていません。「朝鮮中央通信」が、「談話が出た」と報道しました。その内容は、「安倍政権の制裁はけしからん。それに対して、「共和国(北朝鮮の自称)は、特別調査委員会を解体し、再調査を中止する」と述べました。しかし、対日対話をやめるとは言わない。去年の4月には「対話ができなくなっている」でした。
特別調査委員会を解体することに何の意味もないんです。拉致被害者について調査する必要はないんですから。もう1年半以上やってきたわけですから、意味がないんです。北朝鮮からしても、次のタイミングで何か日本に言ってくる時、「今年2月で調査委員会が解体したけれど、それまでの間に調査したものはこれだ」と言えるようになっているわけです。対話を閉ざすとは言ってないんですから。
ただ問題は、何を出してくるか、です。つまり、去年からの北朝鮮の動きを見ていると、日本に接近したい、日本から取りたいものがある。しかし、できれば拉致被害者を返さないで取りたいということだったんだと思います。
だから、去年からの戦いは、「それはできない」、「被害者を返さなければ日本から何も取れないんだ」ということを金正恩氏に分からせる戦いだったわけです。
被害者の「遺骨」なんか出してきたら、逆の意味で最悪になりますよ。これで問題解結したことにはならなくて、日朝関係は最悪になり、西岡なんかは軍事制裁だと叫んでいる、ということを一定程度分からせることができたかもしれない。
まだ分かりません。日本は北朝鮮が嫌だと言ってきた総連に対する対応をしました。そして拉致の国際化もして、安保理の制裁でも「人道問題」を書き込ませました。世界の制裁をリードして、一番厳しい制裁を今でもしています。