北朝鮮最新情勢と救出への展望?東京連続集会90全報告
◆帰国した人は公開の席で何も話さなくてもいい
西岡力(救う会会長、東京基督教大学教授) 拉致の話に戻りますが、今の状況はにらみ合いで、北朝鮮は日本からほしいものがまだある。制裁も緩めてほしいし、お金や物もとりたい。国際的孤立をまぬがれるために、安倍訪朝というカードも使いたいと思っていると思います。それらをまだあきらめていない。
だから去年は、「対話ができなくなっている」と言いましたが、今年は特別調査委員会の解体です。平壌に昨年以上に厳しい制裁がかかっているのに、対話を止めるとは言っていません。
我々は4月9日に国民大集会を開催し、その決議が配布されていますが、実質的な協議をせよ、ということを決めました。「私たちは、制裁と国際連携の圧力で拉致被害者を取り戻す実質的協議の場に金正恩政権を引き出すという救出戦略を立ててきた。金正恩政権を一層追い込むことができたという点で、ストックホルム合意の時点に比べてむしろ現在の方が有利な状況になったといえる。ぶれることなく、圧力を高めながら実質的協議を持つべく努力すべきときだ」です。
実質的協議というのは、金正恩に被害者を返す決断をさせた後、その条件をどうするのかという協議です。全員一括で返すというのであれば、できないこともありますが、日本ができることもあるわけです。
国連制裁よりも厳しい制裁をかけている部分については、拉致で使うことができる。人道支援は国連制裁でも禁じられていません。過去に日本は50万トン、60万トンの米支援をしたことがあります。
WFPなどの国連機関は今も北朝鮮で活動しています。そのことは、使える物としてあります。もちろんモニタリングなどの条件は付けなければいけませんが。
あるいは秘密をたくさん知りすぎているから返せないことが想定されますが、被害者は犯人ではありませんし、公務員でもないですから、帰ってきた後、公的活動をどれくらいするのかは、本人と家族の意思です。
我々は絶対に公開の席で聞かなければならないことが一つだけあります。それは、「これで全員だ」と北朝鮮が返してきた時に、「これで本当に全員ですか。もっと他の人を知りませんか」と。
このことは聞かなければなりません。しかし、それ以外のことについては、公開の席で活動するかどうかは本人と家族の意思です。
過去に富士山丸の船長と機関長が北朝鮮に抑留された時、金丸訪朝の後、小沢一郎氏と土井たか子氏が身柄を引き取りに行った時、「二人が帰国後反北朝鮮的な言論活動をしない」という書類にサインしてきました。
本人に成り代わって政治家がサインするというのは大問題だと当時問題になりましたが、逆に、本人と家族の意思を尊重するということは政府が言えばいいのです。我々もそれを尊重したいと思います。
蓮池薫さんたちが帰ってきた後、有楽町で集会をした時に、一度出てきてその後出てこなかったですね。我々は、何だろうなあと思ったりもしたんですが、彼らは、「我々が表に出て活動すると後の人が帰ってこれなくなる」と言っていました。
つまり、帰ってきた人たちが反北朝鮮活動の中心になるのであれば、返した人間が責任を問われる、殺されるという構造があるわけです。まず被害者を取り戻すことが第一とすれば、そういう条件は話し合っていいと思います。早くそういう条件に付いて話し合うようになってもらいたい。それが4月9日の決議の意味です。
これが「北朝鮮は実質的協議に応ぜよ」、「政府は実質的協議の場に彼らを引き出せ」と決めたことの本音の意味です。