今ここまで言える日本人拉致の全体像ー東京連続集会91全報告
◆打石信号で互いに確認する
西岡 もう一つ、回収があります。不法出国ですが、この場合は真っ暗な中でゴムボートに乗らなければならない。打石信号というのがあるのですが、真っ暗な中で確認するのに、石を打って確認するんです。
惠谷 真っ暗な夜、海岸で石を二つ拾って叩きます。作戦や時代によっても違うんですが、例えば今回の作戦は5回と取り決めをする。これは双方の合計が5回です。1回カチンとやると、向こうは4回返す。2回なら3回返す。
これは石を例えば2回叩くと、釣り客か何かが返してくる可能性があります。しかし、どこにいるか分からない。ピンポイントでランデブーする必要があります。回収役の工作員はウェットスーツを着て上陸します。待っている人間は岩陰にいると言っても、現場では1メートルくらいの差で会う必要がありますから、10メートル離れると、暗い中で、悟られないようにして、打石信号で2回叩くと、2回返ってくると、これは違うということになる。
石川県警が、打石信号が夜、どの程度まで聞こえるか現場検証したんですが、普通程度の音で60メートルまで届くそうです。双方が接近して、作戦のために準備された名前で確認する。そして回収する人間をゴムボートまで連れて行って、侵入とは逆のコースで戻るというのが通常の作戦です。
西岡 打石信号について石川県警が現場検証したということでしたが、実は宇出津(うしづ)事件で打石信号が使われています。そういうこともあって石川県警が現場検証したわけです。
つまり、この工作員の回収は、Bパターンの人定拉致と同じ方法です。工作員を回収する時、拉致被害者も一緒に回収する。だから久米裕さん拉致の時、打石信号が使われたわけです。
一方、条件拉致の場合は、工作員の浸透、回収とは異なります。つまり、浸透させてもう一度回収する。一つの作戦で二つをやる。そのために沖合で母船が2、3日待っていなければならない。これは大変危険なことです。
もちろん当時監視が厳しかったかどうかですが、条件拉致は見つかっていませんので、危険だと簡単に言いきれないかもしれませんが、増元さん、市川さんたちの事件では、海上保安庁が不審船を目撃していると現地の新聞は書いています。何日間か待っていたからこそ、そういうことが起きたのです。