核・ミサイルと切り離して全被害者救出を先行させよ?特別集会全報告
◆制裁強化の段階から制裁解除をてことする段階に来た
西岡 力(救う会会長、東京基督教大学教授)
レジュメに戻りますが、被害者救出運動では、私たちはこれまで圧力をかけて北朝鮮を協議に引き出すとずっと言ってきました。それは2つの段階に分けられます。
第1段階は、圧力をかけて協議を引き出す段階、第2段階は、かけた圧力を使って被害者を取り戻す段階です。安倍総理も繰り返し色々なところで言っていますが、「制裁は2回活用できる。1回目はかける時、2回目は降ろす時」と。
制裁をかけて協議の場に引き出して、制裁を降ろすことを条件に被害者を取り戻すということが安全に取り戻す最善の策だと思っていますが、それ以前に北朝鮮の政権が崩壊するかもしれない。そのことを想定して救出戦略を練っておくという3つ目の道も念頭にありますが、今は第1の道の中で第2段階に入ったと思っています。
北朝鮮が2回の核実験と23発のミサイル発射を今年になってからやった。国際社会が強い危機感を持って北朝鮮に対して圧力をかけている。わが国もその圧力を強める先頭に立っている、という状況です。
特に今年2月にわが国は、今年1回目の核実験を契機として、現行法規でできるほぼすべての制裁をかけました。あとは人の往来についてだけ残っています。世界で一番早く独自制裁をかけました。
そういう中で、次に制裁を使うことができるか。核でかけた制裁は核でしか使えません。だから我々は核だけを理由に制裁をかけてくれるな、制裁をかける時はいつも拉致も理由だと言ってくれと言ってきました。それは実現しています。
今日本がかけている世界で一番厳しい制裁は、核と拉致の両方を理由にしています。そこで9月以降我々は、拉致問題と核問題を切り離してほしい。切り離して拉致問題を最優先で解決してほしいという要求をするようになりました。
飯塚繁雄代表が繰り返し、加藤大臣に対しても、安倍総理に対しても、様々なところでそういうアピールをしてくださっています。第一最優先だと繰り返し飯塚代表がおっしゃっています。
それは人の命がかかっているからです。拉致が犯罪だからです。他の人道問題も重要だと思いますが、拉致は犯罪で人の命がかかっている。だからこそ最優先と言っているわけです。
ここに核実験がなされた時に我々が出した声明と国民大集会での決議を引用しましたが、9月の核実験直後の声明では、「どのような情勢下でも被害者を見捨てることは許されない。むしろ核問題でかかる強い圧力をてことして、拉致被害者救出を先行させることも可能だ。政府の一層の努力を強く求める」と申入れをしたわけです。
この「てことして」という言葉は、最近加藤大臣も使ってくださっています。「厳しい情勢をてこにして拉致問題を解決する」と聞いています。そういう点では、加藤大臣だいるという体制は大変よかったと思っています。
今拉致担当大臣がいなくて、外務大臣しかいなかったら、どうなるか。外務大臣は世界をかけまわって、国連で制裁を強めよう、各国に制裁を強めよう、核をやめさせようと言っているわけです。
それをてこにして拉致問題を解決しようということと、制裁を強めましょうということを同じ人が言うのはなかなか難しい。しかし、拉致担当大臣は、拉致が担当で核担当大臣じゃない。
日本政府としては、北朝鮮の核問題は緊急の課題で解決しなければならないと言っている状況の中でも、「拉致を優先して解決しなければならない」ということを言う立場なんです。