核・ミサイルと切り離して全被害者救出を先行させよ?特別集会全報告
◆全被害者を返せば人道支援はできる
西岡 力(救う会会長、東京基督教大学教授)
政府に総理を本部長とする拉致対策本部があり、担当大臣がいるという体制だから、国際社会が拉致を吹き飛ばしてしまいそうな危険な状況の中でも、踏みとどまることができる。そういう体制になっているということだと思います。
9月の国民大集会の決議でも、「北朝鮮は、今すぐ、被害者全員を返せ。全被害者を返すための実質的協議に応ぜよ」と求め、「政府は、核・ミサイル問題と切り離して被害者帰国を先行させるための実質的協議を最優先で実現せよ」と言っています。
実質的協議というのは、率直に言うと、2年前のストックホルム合意とは違います。被害者の帰国を最優先にして、それも一括帰国が実現するならば日本は何をする、何ができるという協議です。一括帰国に特化した条件の話し合いです。それをしてほしいということです。
先ほども言いましたが、今年3月、国連の安保理事会では、厳しい制裁を決めました。これまでぜいたく品の輸出、軍事関係の輸出を禁止する制裁をしていましたが、石炭などの鉱物資源対北輸入、北朝鮮から買うことも禁止です。
但し、「人民の生活に関係するものについては例外」とされて、中国は北朝鮮の石炭で火力発電をしたり、暖房に使っています。「それは人民の生活に関係するから」と、中国は未だに北の石炭を買っています。
北朝鮮に食糧輸出をするのを止めないというのは北朝鮮の食糧が中国からしか入ってこないとすれば、「人民の生活に関係する」かもしれませんが、中国の火力発電所は、国内の石炭でも他から買ってもいいのに「人民の生活に関係する」として中国は制裁をサボタージュしていると思います。こういう制裁が今かかっています。
日本は何をしているか。日本は、すべての貿易を止めています。最近「産経新聞」の報道等で、今年も北朝鮮のマツタケが日本に入ってきており、それは制裁破りだという報道がありました。
その制裁破りという意味は、国連の安保理の制裁破りではない。国連の制裁では北朝鮮から食料品を買うことは禁止されていない。マツタケは軍需品でもないし。ぜいたく品ではありますが、北朝鮮からの輸出です。北朝鮮へのぜいたく品の輸出は禁じられていますが、買うのはいいわけです。しかし、日本はすべての輸出入を禁止しているから、北朝鮮のマツタケは制裁破りです。
どういう形で入ってきたのか。中国の延辺にある、中国の商社が北朝鮮のマツタケを買って、中国産だという書類を偽造しています。丁寧なことに、「これには北朝鮮産は入っていません」と保証書まで付けて日本に輸出しています。
このことを私は具体的に業界の関係者から聞きました。「横田さんたちがあんなに一生懸命頑張っているのに、うちの業界がこんなことをやっているのは恥ずかしい」と。去年も同じ情報提供がありましたが、今年もやっているという話でした。
日本は今、北朝鮮に対する人道支援も止めています。北朝鮮は今台風の被害がひどいと言って、国連のWFPなどが現地で活動しています。安保理事会では北朝鮮に制裁をかけていますが、国連の帰還が人道支援はしています。
日本はこの呼びかけに応じていません。その理由は、2004年に、小泉首相が二度目の訪朝をした後、25万トンの米支援などを約束し、その半分は実施しましたが、その年の12月に横田さんや松木さんのものとして渡された「遺骨」が他人のものだったことなど、あまりにも非人道的なことを北朝鮮がしたので、人道支援を止めています。
我々としては、北朝鮮の困っている人を助けたい。そのためには早く北朝鮮が、「前回送った二人分の遺骨を含む書類は全部偽物でした。被害者は生きています。返します」と言ってくれれば、日本は人道支援ができるんです。