核・ミサイルと切り離して全被害者救出を先行させよ?特別集会全報告
◆有事救出に必用な憲法解釈のチャンスを逸した安倍総理
島田洋一(救う会副会長・福井県立大学教授)
今の関連で、昨年安倍政権は新安保法制を通しましたが、あの時、集団的自衛権に関して、事実上の憲法解釈の変更をしたわけです。しかし、あの時の安倍政権の大きな失態は、北朝鮮で自衛隊が救助活動できるんだと、これも合わせて憲法解釈の変更をすべきだった。
審議会の方はそういう答申を出しているんです。なくなった小松さんという法制局長官が主導して、「自国民が被害者になっていて、その国が保護するつもりがない時には自衛隊等を派遣しても憲法違反にはならない。国際法違反でもない」という、新たな憲法解釈を審議会段階で出したんです。
安倍政権が何を考えたのか、そこまで出すと国会審議が混乱すると思ったのか、消してしまって、安倍さんが「それは憲法上できない」と言ってしまった。これは重大な過誤であったと思います。
中山恭子さんなどは野党の立場で、「その憲法解釈はおかしい」ということを当初から言っておられました。憲法解釈を変えたことは過去にいくらでもあることですから、安倍政権の間にもう一度そこの部分を、「憲法上救出もできる」と解釈を変更すべきだと思います。
反対する人はいないと思います。反対するのなら、「じゃあ憲法改正をすぐにやりましょう」という議論につなげるべきだと思います。拉致被害者救出は最優先課題だとほとんどの政党が言っているわけです。ところが、現行憲法では自衛隊を送って助けることができませんとなると、最優先課題が現行憲法では実現できないことになります。やはり憲法を変えないといけないのです。
あと、サイバー攻撃。ドナルド・トランプ氏が、「自分が大統領になったら、敵対勢力に対する攻撃もしっかりやる」と公約しています。以前陸上自衛隊のサイバー担当の方に話を聞いたところ、「日本は専守防衛という立場から、ディフェンスだけで一切攻撃してはいけないことになっている」、「考えてもいけないことになっている」と言うんですが、北朝鮮が核ミサイルを発射しようとした時、サイバー攻撃で無力化できれば一番いいわけです。サイバー攻撃をしてはいけないという姿勢も改めてほしいと思います。
もう一つ。これも外務省の関係者などに毎回言っていることですが全然実現されないのが、国連の場等で、「中国にも拉致被害者がいるじゃないかということを、もっと大きな声で言え」と。
安保理の北朝鮮に対する制裁決議がなされる場合、日本政府としては常に「拉致」という言葉を入れて、それも制裁の理由に書き込むようにと提案しているわけですが、常に中国が、「拉致は日朝2国間の問題だから多国間の取り決めに入れるな」ということでつぶしてきた。
その際に、「中国人の拉致被害者もいる。マカオから拉致された二人の女性を初め中朝国境で100人以上やられている」と言われているわけで、「中国も被害者がいるのだから一緒に助けよう」と言うべきなのに、中国政府自身が自国の拉致被害者がいることを認めてないので、「日本が言うと日中関係がぎくしゃくしかねないから日本からは言いません」というのが外務省の立場です。
これは戦略的に全くおかしいと思いますし、外務省が態度を改めるべき点の一つだと思います。