国際セミナー「激動する南北情勢の中で拉致問題を考える」全報告
◆北がアメリカまで届く核を作れば2002年に近い状況も起こり得る
西岡力(救う会会長、東京基督教大学教授)
その中でアメリカの動きは、今古森さんの報告にありましたように、我々にとってはプラスです。2002年に近い状況も起こり得る。トランプ大統領はアメリカ第一主義ですが、アメリカまで届く核・ミサイル開発を金正恩は止めません。となると、どういう状況になるか。
韓国を守ることについては、韓国は韓国を守ると言うでしょうが、アメリカはアメリカで守る。金正恩はアメリカまで届く核を持ってアメリカと交渉することは基本的に矛盾しません。2002年に近い状況が起きることが分かります。まだ大統領に就任していないので何とも言えませんが。
一方、韓国の状況は、来年の12月、あるいはそれよりもう少し早く大統領選挙が行われて、もう一度私が言うところの「春風政策」をとるかもしれない。不愉快な思いをさせないで、先に援助をしてしまう政権ができるかもしれない。その点はマイナスです。
しかし、韓国の経済情勢等を見ても、韓国一国で北朝鮮を助けられるわけではない。金大中大統領は、金正日に会った時に、実は「アジア開発銀行から融資をもらいなさい」とアドバイスした。そこで北朝鮮はアジア開発銀行に加入しようとしたんです。
その障害になったのが「テロ支援国指定」だった。アメリカがテロ支援国指定している国には、融資に反対する。アジア開発銀行は一国一票ではなく、出資金額によって決定権が異なりますので、アメリカが反対したら入れないんです。それでテロ支援国指定の解除をしてくれという交渉が始まったのです。だから我々は、「拉致はテロだ」と言って、それを防ぐ。そうすれば北朝鮮に痛みが起こるという戦略をとったわけです。
韓国一国では北を助けられない。トランプ政権が、北朝鮮に与える痛みの方が、韓国の左派政権が北に与えるやわらかさ(春風)よりも強いのです。計算すると、より一層厳しくなるのではないかと思っていますし、金正恩政権もそう思っているでしょう。