国際セミナー「激動する南北情勢の中で拉致問題を考える」全報告
◆トランプ政権は米中関係を変えようとするだろう
古森義久(麗澤大学特別教授)
トランプさん自身が米中関係のバックグラウンドを知っていて、例えば「一つの中国」という原則があり、それに違反してはいけないんだということが分かっていて、それを覚悟の上で台湾の総統と直接話したかというと、この辺は疑問があります。
しかし、トランプさん自身は中国に対して厳しいことを言い続けています。まず貿易の問題から入って、為替レートを不当に操作しているとか、貿易では一方的に自分たちだけが得をしているから中国の輸入品には45%の関税をかけるとか厳しいことを言いました。
その割には、政治、軍事、外交等について中国について論じたことは少ない。しかし、中国の批判に対して、ツイッターで「南シナ海でやりたいことをやっているのに、いちいちアメリカの了解を得ていないじゃないか。だから我々が台湾の総統と話す時に、あなたたちの了解を得る必要はない」と言っています。
この部分に象徴されるような、中国が今までにやってきたようなことを座視はしませんよと、そういう力の行使を含めて押さえつけていくぞという感覚が間違いなくあると思います。
もう一歩進んで、トランプさんのところに今集まってきている人たちの中には中国の専門家ももちろんいるわけで、そういう中の二人から直接話を聞いたのですが、彼らも中国に対してはトランプ政権は非常に厳しくしていく、と。
今までのオバマ政権のやり方は、結局中国が無法でやりたいことをやっていても、中国に代償を払わせなかった。本当の意味で抑止をしなかった、制裁を加えなかった。これではだめだとはっきり言っています。
一人は、東アジアでアメリカは軍事力を増強すべき。オバマ政権はアジアへの旋回とか再均衡とか言ったけれど、結局東アジアにおける米軍の力は相対的に減ってきている、と。その傾向を逆転させて、まず中国に力の行使をして、押さえつけて、その上で色々な問題を交渉すると言っています。
もう一人は、中国がやっている無言の行動に対して、代償を払わせることを絶対トランプはやる。これからやるべきは軍事力も含めて中国を封じ込めることで、トランプ氏はそういうことをやるだろう、と言っています。
アドバイザーが言っていることが本当にそうなるかは分からないですが、そういう背景の中で台湾の総統と話したことを考えると、今までの米中関係の大きな枠組みをかなり変えると思われます。それもかなり平然と、断固としてやる。それには常に危険が伴うわけですが、それを崩していく構えがひしひしと感じられます。
島田 具体的な拉致問題の話に入りたいと思いますが、北朝鮮から色々な情報が出てきています。崔成龍(チェ・ソンヨン)氏、韓国の家族会の一つの代表が、「デヴィッド・スネドンさんが拉致されて、北朝鮮で結婚している」という情報を出してきました。日本人拉致被害者に関しても様々な情報があるようです。この場で言える範囲で、現在拉致被害者がどういう状況にあると考えられるか、西岡さんどうですか。