家族会・救う会の新運動方針ー東京連続集会94全報告
◆「最重要」ではだめで「最優先」でなければならない
西岡力(救う会会長)
まず、「拉致問題を最優先にしろ」と書きました。道筋の一つは最優先ということです。色々調べてみましたが、安倍総理が国会で、所信表明演説等で使っているのは「最重要課題」です。「最優先」という言葉はあまり出てきません。「最重要課題」というのは重要だということですが、核・ミサイル問題も最重要課題です。日米同盟強化も最重要課題です。私もその通りだと思います。核・ミサイル問題が日本の安全保障にとって最重要課題であることは間違いありません。
しかし、それでは道筋が見えないのです。去年の9月に我々は、「拉致救出運動は新たな段階に入った」と言いました。それは北朝鮮が去年20発以上のミサイル発射をし、今年になってまた発射しました。また核実験を2回やりました。1回目が9月でした。世界中が北朝鮮を非難している。今回また北朝鮮の暗殺テロがあったために、中国もついに強い圧力を行使するに至った。
しかし、それをそのまま見ていると、北朝鮮に対する中心課題が核・ミサイル問題、あるいは今回のことを含めてテロ問題になってしまった。拉致問題の旗が飛ばされてしまうかもしれない。
日本政府ももちろん、アメリカと韓国と協力しながら、中国にも圧力をかけながら、北朝鮮の核を止めさせる努力をしています。安全保障にとって当たり前のことだと思いますが、そういう時に被害者をどう助け出すのかということを考えてもらわないと、今年中なんてことは絶対できないと思っています。
だから「最重要」ではだめで「最優先」でなければならない。「最優先」というのは先にやるということです。我々は、核・ミサイル問題と拉致問題を切り離して、拉致問題を先行して解決してほしいということを、9月以降強く言っています。だからここに「最優先」という言葉が入っているのです。
今の状況は9月以降変わっていません。今回のミサイル発射やテロで、北朝鮮に対する圧力はより一層強まっています。しかし、我々が何もしなければ、その圧力は別の課題を解決することに使われてしまいます。核問題、テロ問題です。
しかし、我々が最優先で拉致被害者救出に取り組めば、その圧力を活用することもできる。北朝鮮が5人の被害者を返した時、色んな要素がありましたが、一つの要素はブッシュ政権による強い軍事的圧力です。ブッシュ政権は前年の2001年に、同時多発テロを受けて、「テロとの戦争」を宣言したわけです。
普通テロというのは警察マターです。犯罪です。軍隊は出ないわけです。しかしあの同時多発テロは戦争のレベルだということで軍隊を出した。軍隊を出すということは、裁判にかけないで相手を殺すということです。警察は犯罪であれば、推定無罪の原則で裁判にかけるんです。しかしそのレベルを超えているとして、まずアフガニスタンで戦争をした。テロリストの基地を叩き潰したんです。
それから、「テロリストが大量破壊兵器である核・ミサイルや毒ガスを持つことを戦争しても止めさせる」と言いました。その時北朝鮮は核・ミサイル開発を続けていた。そしてアメリカは、北朝鮮がアメリカや国際社会をだまして核・ミサイル開発を続けていると言う決定的証拠を2001年秋につかんだのです。
パキスタンから濃縮ウラニウムを作る技術を10年前くらいからもらって、国際社会には「核開発は凍結している」と言って、アメリカから年間50万トンの重油をただでもらいながら、核・ミサイル開発を続けていた。
そのことについて、アメリカの軍がパキスタンに入って、10数回北朝鮮に行って、濃縮ウラニウムを作る技術指導をしたカーン博士から直接聞いて、証拠を握った。ジョン・ボルトンさんという人がいます。ブッシュ政権の前期、国務省の軍縮担当次官でした。ボルトンさんはカーン博士に直接会ったと言っていました。そのボルトンさんは一番の対北強硬派です。そういう人が決定的な証拠を持っている。