緊迫する朝鮮半島情勢下での救出戦略ー東京連続集会95全報告
◆射程が1万キロから1万2千キロ、固体燃料、移動式ミサイルに成功
惠谷 そうですね。今の北朝鮮の核・ミサイルがどの程度進んでいるかについてお話したいと思います。その前に、みなさんもテレビでご覧になったと思いますが、4月15日が北でいう太陽節です。金日成の生誕記念日で、軍事パレードなどをしました。そのパレードに10種類のミサイルが出ました。そのうちの7種類が新型です。そのくらい開発に力を入れています。
また配布資料にもありますが、金日成時代のミサイル発射数は15発、金正日の時が16発です。金正恩になって、今年4月までで76発です。けたが違うわけです。数もミサイルの種類もびっくりするほどのものを作って実験しています。アラスカまで届く物はもう完成したと思います。
金正恩は今年1月の新年辞で、「北の大陸間弾道弾の製造は最終段階に至っている」と言い、今年中に完成させると予告しました。同時に「宇宙ロケットも発射する」と言っています。
また宇宙ロケット、これは光明星という人工衛星ですが、2回打ち上げに成功しています。現在燃え尽きたかも分かりませんが、現在地球を回っています。おそらく電源の問題、太陽電池の問題や通信機能の問題で地上と通信ができないものですから、誰も相手にしないというか忘れ去られています。
この宇宙ロケットはテポドンという米韓軍の名前で、北朝鮮名は銀河3号と光明星です。テポドン2号というロケットは三段式で専門家の計算によればアメリカ西海岸まで届きます。つまり1万キロの射程があります。これは誰が見ても大陸間弾道弾です。
金正恩は宇宙ロケットをまた打ち上げると言っています。これは人工衛星を打ち上げたいということですが、テポドンという大陸間弾道弾(ICBM)を既に所有しているにも関わらず、「大陸間弾道弾の製造は最終段階に至っている」と言っています。これはどういうことか。
テポドンというのは三段式ですから全長が長い。発射台に固定して発射します。見られないようにカバーを付けたりして工夫はしていますが、とにかく発射までは地上に固定して作業しなければならないので、「今始まっている、こいつら撃つぞ」ということが何日も前から分かります。
金正恩の頭では、そういう脆弱なものをICBMとは考えていないのではないかと思います。これは当然の理性的な発想です。では金正恩が考えているICBMはどういうものか。
まず射程が1万キロ以上。1万キロがサンフランシスコで、1万2千ならワシントン、ニューヨークに届きます。次に、最新の新型ミサイルが7基登場したと言いましたが、北朝鮮は固体燃料に今非常に力を入れています。やっとその技術を獲得しました。
それまではテポドンもそうですが、ほとんどが液体燃料でした。だからICBMではないと金正恩は考えているのかもしれません。液体燃料は発射直前に燃料注入が必要で、固体燃料は常時装てんできますから発射命令が出ればすぐに発射できる。これが2つ目の金正恩の頭です。
西岡 固体燃料が成功したのは北極星2号ですか。
惠谷 はい、1号と2号です。ムスダンは液体燃料です。そして金正恩の頭にある3つ目のICBMの条件は、発射方法です。テポドンは発射台から発射しますから固定式です。これでは必ず米軍に攻撃を受けるので移動式を考えています。従って、ミサイルを車両に積んで移動できるものを考えていると思います。
要約すると、射程が1万キロから1万2千キロ、固体燃料、移動式です。
この移動式にはもう一つポイントがあります。テポドン以外はすべて移動式ですが、火星12号は装輪式で北極星2号は装軌式です。装輪式はタイヤで装軌式は戦車と同じキャタピラです。これまではほとんどタイヤでした。まだ完成していない火星13号は16双輪で、片側にそれぞれ8つのタイヤがあります。
これは後ろのタイヤがハンドルと同じように自動的にコンピュータで動きますが、この技術がないと16双輪は製造できません。今の北の技術では曲がれないのです。従って中国から6両輸入してパレードで公開しています。
この技術がないのを自覚して、戦車は設計はロシアですが国産ですから作れます。キャタピラで動かすのであればいくらでも作れます。これに乗せればいいという発想です。今年になって初めてこれを完成させ、登場しました。これは自分たちの能力に応じたすばらしい発想で、正直言って驚きました。これが今後どんどん出てくるはずです。
ICBMの3つの条件の3番目も、キャタピラ式で解決しました。まだ完成していない火星13号、火星14号はキャタピラ式になると思います。火星13号はパレードに出ましたが、おそらくドンガラ(中身がない)だけだと思います。
西岡 ミサイルのことは分かりました。まずたくさん撃っている。そして技術が進んでいるということで、脅威が高まっています。ミサイルと核弾頭の開発は両輪ということですが、核弾頭の開発はどこまでいっているのか。
ミサイルについては、よく言われるのが、大気圏の外に出た後、大気圏に再突入する時高温になるので、地上に届く前に爆発してしまう、と。その再突入技術を持っているかについても教えてください。