トランプ大統領面会報告と緊迫する北朝鮮情勢-東京連続集会99
◆「認定の有無にかかわらず全被害者の一括帰国」
西岡 力(救う会会長)
何か政変が起きて、金正恩が安定的に除去されて、核をやめるということになったら国際社会は支援することになるでしょう。そうした場合、お金を出せるのは日本ですから日本との交渉になったら、もちろん人権問題一般ということもありますが、拉致被害者が全員帰ってくれば国交正常化交渉に入れる。
核はまずやめてということで、そういう一番いいシナリオもあるわけですが、だからこそ金正恩は自分の身の回りのことばかり気にしている。自分の安全を一番考えている。成功するかどうか分かりませんよね。暗殺未遂事件が2回あったと言われていますが、失敗しているから生きているわけです。
いくつかのシナリオがありますが、金正恩も本当に自分に出口がないと思ったら、出口を探すのではないかと思います。その場合に、核問題と拉致問題は彼にとってどちらが容易か。核を放棄するというのは、金日成時代の1950年代から、しかも完成直前までいっているのにそれを全部放棄するということができるかどうか。
金正恩の業績で誇れるものは核しかないわけです。拉致は、自分は命令していないし、自分が生まれる前に起きたことだし、父親も認めていることだし、戦術的な問題ですよね。だから先にこちらに来る可能性もある。あるいは先にアメリカと交渉することになるかもしれない。
その両方の場合に備えて、我々は制裁をかけ続けるけれども、その後交渉の局面に入った時に何を要求するか、頭の整理をしておかなければならない。一部では、「交渉が大切だ。そのために人道支援の再開を考えたほうがいい」とか、「ストックホルム合意に戻って日本人妻の調査を受け入れたらいい」という議論がありますが、私はそれは絶対反対です。
「認定の有無にかかわらず全被害者の一括帰国」。これを日朝協議が先行した場合も、米朝が先になった場合も、今度はアメリカにそれを言ってもらえるよう働きかける。
「全被害者の一括帰国」、それを向こうが呑んだ段階で、見返りに何が欲しいかを言ってもらう。秘密を守ってほしいのなら、被害者が静かに暮らせることを政府として約束していい。家族も被害者を反北朝鮮運動の先頭に立てるなんて言っていない。静かに暮らしたいと言っている。日本政府には被害者とその家族の希望をかなえる責任がある。
ただし、「全被害者の一括帰国」を分割するようなことに乗ってはならない。何人かとか、自分の足で行った人を先に返すと言ってくるかもしれない。彼らの行動パターンは、アメリカが軍事的圧力をかけた時譲歩する。譲歩するけど嘘をつくんです。
譲歩する局面にもうちょっとしたら入るかもしれない。しかし、ここで嘘をつかれたら、取り残された人は本当に絶望だと思います。何人かということに乗ったら、残された人は絶望です。今の家族会の状況からしても、家族と会えないことになってしまうでしょうし、親の世代とはもう会えないと蓮池薫さんは言っています。
向こうにいる人たちは物質的にはめぐまれているが、精神的に本当につらい、と。2002年に続いて二度目のチャンスが来て、ここでも自分は死んだとして処理されたことが分かったら、もう精神の安定は保てないだろう。あるいはまだ自分の名前さえ名簿に出ていないことが分かったら、精神の安定は保てないかもしれない、と蓮池さんが言っていますが、私もその通りだと思います。