国際セミナー「緊迫する北朝鮮情勢のもとで拉致被害者救出を考える」全報告
◆総理直属の救出のための組織を作れ
松原仁(希望の党拉致問題対策本部長、元拉致問題担当大臣、衆議院議員)
先般、増元さんのお母さんもジェンキンスさんも亡くなった。とりわけ増元さんのお母さんが亡くなられたのに、被害者はなかなか帰ってこない。痛恨というか、無念です。
希望の党では、先般拉致問題対策本部を作り、私が本部長、中山恭子さんが本部長代行、渡辺周さんも本部長代行ということでスタートしました。その第1回会合で、私も担当大臣をさせていただき、中山恭子さんも担当大臣をさせていただことの責任を含め、この15年間、結果として拉致被害者は日本に帰ってこられなかった。
この15年の戦いは、はっきりと言えば、失敗であったことを率直に認めることからもう一度議論をしなければ間に合わないのではないかということも、決議されました。
その決議を安倍総理大臣に要請したいとお願いしたところ、11日に、大変お忙しい総理がお時間をとっていただきました。私と中山さんとで官邸にお伺いをし総理に申し入れをしました。
1つはストックホルム合意。中山恭子さんは、日朝平壌宣言も含めて事実上形骸化している、と。私はストックホルム合意は破棄すべきと一貫して主張してきました。まったく効力があるとは思われない。
もちろんこのストックホルム合意は、日朝平壌宣言も含めて北朝鮮との間のパイプなので尊重すべきだという声があるのは承知しています。しかし、私の実感、中山さんの実感は、北朝鮮にとって日本とのパイプというのは、極めて有効なものであるがゆえに、必ずパイプはできると私は思っています。
できない時はできないが、今はあってもなくても同じようなものですから、それは必ずできると思っています。従って、どれほど我々が怒っているかということを様々な制裁は制裁として大いにやればいいと思いますが、しかし、このストックホルム合意を破棄するところから日本人の怒りを明確に示さないと、彼らは分かりません。
彼らには、あまり複雑なことを言うよりは、直線的に人間の思いを伝えた方がいいというのが私の実感です。
5つの項目がありますが、1つは従来の拉致対策本部、外務省主導のやり方は尊重するが、結果が出ていない以上、新しいものにすべきだということを敢えて提言しました。総理直属の組織として救出を専門にする組織を作るべきと主張しました。
そのために、あらゆるロビイストや、あらゆる情報機関を、総理直属の組織を、総理の責任で使ってやっていくべきということを提言しました。これが我々の提言の中で一番現実的で、大きな布石だと思っています。
また、拉致問題が当初存在することが明らかになってからも、国がそのことに不作為だったことで、いわゆる賠償責任を日本政府も追うべきであるということです。
そしてもう1点は、私も前から言っていましたが、寺越昭二さん、寺越外雄さんの拉致認定をすべきということです。もちろんトランプ大統領に寺越家も会ったということも含め、政府が踏み込んで行動していることを私は評価しますが、やはり明らかにこれは拉致だということを率直に我々は認めるべきだと思います。そういうことを総理に要請したわけです。
私は、今この段階で、増元さんのお母さんが亡くなり、ジェンキンスさんが亡くなり、そして多くの被害者家族の皆さんの高齢化が進み、この問題は本当に時間との戦いでしたが、現実的な成果がないままです。ここは大胆に、組織、運営をやり直さなければならない。これが担当大臣をしてきた私と中山恭子さんに共通する思いです。
これは安倍さんの強いリーダーシップ、そして安倍総理には拉致問題を解決するとの強い思いが今もあると私は確信しています。ですからこういう提言を実行してほしいと思っています。
時間がない。被害者家族が死んでいく。もうまったなしです。皆さんも、本当に思っていることをなかなか言いきれないことがあるかもしれませんが、そろそろ率直にお互いが言い合わなければ間に合わないのかなと思っています。
私もそうした中で、野党として、できることはすべてやり、家族の方が喜ぶように進めていきたいと思っています。共に皆さんが団結をする、そして日本国民がこのことに対して怒る。この熱意こそが最大の武器であるという事実は、過去も、現在も、未来も変わりません。
今日お集まりの皆様が、怒りを共有して、なんとしても早期解決に向けて頑張っていただきたいと思います。終わります(拍手)。