国際セミナー「緊迫する北朝鮮情勢のもとで拉致被害者救出を考える」全報告
◆日本という国にゆがみ、弱みがある
古森義久(ジャーナリスト、麗澤大学特別教授)
北朝鮮に拉致されたままの同朋の悲劇、その帰りを待ちわびておられるご家族の方々の苦しみ、これが国際的に今ほど幅広く認知されるようになったのは初めてだと思います。40年間で最も国際的な関心、国際的な論議が高まった時期だと思います。
特にわが同盟国であるアメリカ、北朝鮮が最も気にかける国であるアメリカでの日本人拉致事件に関する認識も、これまでになく最も高まった。しかも、同情、憤慨という言葉で表現できるような反応が明らかになってきた。
これは核兵器やミサイルへの反応とは違って、アメリカ側での人間の心とか感情に通じる反響、同情だと言えます。
しかしその一方、なぜ事件発生から40年も経ってからやっと国際的関心が高まるようになったのか。この点にこそ、この悲劇の特殊な複雑さが現れていると思います。
特に日本にとって、国家的関心事と言っても結果的な関心事であるこの悲劇を、なぜもっと早く国際的な関心事にできなかったのか。あるいは解決することができなかったのか。こういう点にも、日本という国のゆがみとか弱みというものが、ある部分証明されているように思われるわけです。