国際セミナー「緊迫する北朝鮮情勢のもとで拉致被害者救出を考える」全報告
◆「超法規」でテロリストを解放したのに、「超法規」で救出はしない
古森義久(ジャーナリスト、麗澤大学特別教授)
日本ではこういうことが発想としても浮かび得ない。例えば自衛隊が、拉致被害者が生命を奪われる危険に歴然として直面している時に、普通だったら救出に行きますよ。それが日本の場合は行かない。もちろん行っても無駄だとか、行くだけの条件がないとか、実務的な要素がたくさんあるけれど、絶対そういうことはしてはいけないことになっている。
ずっと遡っていくと、戦ってはいけないんですね。愛するものを守るためにも、戦ってはいけない。戦うことは憲法9条で禁止されているということまで言ってしまう。
いまさらこんなことをここで言っても意味がないとおっしゃる方が多いかもしれませんが、結局拉致問題がこれだけ長く伸びて、残念ながらこれだけ国際環境がよくなってきているのに、今日本が独自で解決しようという兆しが全くない。
みんながおっしゃるのは「国際社会との連帯」、「アメリカとの協力」、「国連の制裁」です。ではわが日本はどうするのかというと、沈黙してしまうという状況です。ですから、日本が戦後選んできた国のあり方というのはこわれている。そのままの枠組みでは解決する見通しは立たない。
もう一歩具体的なことを言いますと、私は政府に恨みも何もないですから自由なことを言えますが、何かの形で、日本の部隊が日本人たちを救う会ために動くんだということを考えて、準備をしなければいけない(拍手)。
「超法規」という言葉がありますよね。テロリストに脅されて、テロリストとして日本の刑務所で服役している人間をどんどん解放した「超法規」があるんです。正反対にあるような「超法規」があって、日本人の被害者をいざという時には救出する「超法規」も我々は考えているんだというような、そのくらいの発想はあって然るべきだと思います(拍手)。
アメリカの状況やわが国の状況を見ていると、すごく思うわけです。アメリカでの状況は、日本が普通であれば、力の行使も含めて日本が日本人の命を救うことを考えるだろう、するだろうというところから始まって、でも考えるとそれはできないようだなとなる。じゃあどうしようとアメリカもとまどってしまうところがある。
ですから出発点に戻っての発想の転換で、そして今目の前にある国際的な変化、これまでにないよい状況というのをなんとか活用していきたい。そんなことで私の報告とさせていただきます。ありがとうございました(拍手)。