訪米報告と米朝首脳会談?東京連続集会101
◆体制保障こそ独裁者には重要
西岡 私が言おうとしたのは、島田さんや古森さんが言ったことと違ってないんですが、ただカダフィは死んだんです。それを怖がっているから全部やめるなら体制保障はしてやる。そういう意味で、死んだということも含めたリビア方式はやらないという言い方をしただけです。但し、ディールに応じないならばカダフィと同じように破壊するぞと言ったんです。私も全部見ましたが、そこまで言っているんです。そういうことですよね。
古森 カダフィは結局殺されてしまった。体制保障はなかったと北朝鮮は理解したんでしょうね。だから体制保障のない崩壊という過酷な運命が待っている非核化は、もしそれが「リビア方式」と呼ばれるのであれば、それには絶対応じないぞ、と言った。そしたらトランプは「体制保障だけはしましょう」と言った。
西岡 だから大きく言うと変わっていないんですね。つまりトランプ大統領はすべての手段をテーブルの上に置いて、「大量破壊壁とミサイルを止めなさい」と言っているんです。
「止めるなら見返りを与える。しかし見返りの与え方は、過去のように段階的とか、相互保障的というようなことではなく、短期間で全部止めなさい」。本当に止めたら出口に見返りを置いているということは何も変わっていません。
島田 リビアの時、ロバート・ジョゼフも書いていますが、「リビアも段階的相互的にやろうじゃないか」ということを言ってくるわけです。それに対してジョゼフたちが言ったのは、「早く見返りがほしかったら、早く全面廃棄しろ」と。
またカダフィは当時パラノイア、つまり偏執狂的になっていて、アメリカから斬首作戦をやられることを恐れていた。実際に1986年にレーガンから一発やられたことがあって、その時は危うく難を逃れました。
ジョゼフは交渉しながら、「言うことをきかなかったら斬首をするぞ、と言わんばかりのことを盛んに言ってカダフィを脅しつけたと言っていますが、実はあのパンナム機にジョゼフは乗る予定だったのです。ところが会議の時間が変更になったので危うくまぬがれた。家族はジョゼフが死んだのではないかと相当精神的打撃を受けたということです。
そういう悪夢のような経験があったから、リビアを脅しつけるのに何の良心の呵責もなかったということです。リビアの場合は、「言うことをきかなければ殺すぞ」という圧力を与え続けているんです。
古森 そのパンナム機が落ちた場所はイギリス中部のロッカビーというところで、私は当時産経新聞記者としてロンドンにいたのでこの事件はよく覚えています。最初は誰がやったか分からないわけですが、アメリカの情報当局が無線等の通信を傍受していて、リビアが政権の中枢から指令を出していて、爆弾を仕掛けて落としたことを仮借なく証明してしまったんです。
その前の段階で、島田さんがおっしゃった事件の前にもう一つのテロ事件があって、まだ東西ドイツが分かれていた時のベルリンのディスコで若いアメリカ兵が遊んでいた時に爆破が起きた。これもリビアのカダフィが指令を出していたということをアメリカが確認しました。
その報復として、カダフィが寝ている遊牧民のテントに向かってミサイルを撃ちこんで、隣のテントに落ちて、それ以来我々が見ていても分かるくらいカダフィの言動ががらっと変わったんです。やはり独裁者というのは、力の行使ということと、自分の体制が崩れて命がなくなってしまうことに深い関心があると痛感したことがあります。