訪米報告と米朝首脳会談?東京連続集会101
◆金正恩は自分の身にひたひたと迫っている危険を認識している
古森義久(ジャーナリスト)
金正恩が如何に、本来なら考えられないような行動、言動を取り始めたか。私が北京にいた頃に、金正恩のお父さん金正日が北京に来ました。とにかく絶対に飛行機に乗らないということで、列車で入ってくるんですが、そのことを北朝鮮の意向で秘密にするんです。中国当局もそれに応じた。
そして、北京の真ん中の中南海という要人が住むところまで金正日が来てたのですが、我々記者には分からない。噂だけはあったけど、色々調べても確認できなかった。また汽車に乗って彼が帰ったという時点でやっと発表する。
今回の金正恩の北京訪問も、発表も何もない。金正恩も飛行機には絶対乗らないというのが国際的な定説だったのですが、今回簡単に破られた。これはよほど緊急事態に追い詰められたからでしょう。
力の行使とか、自分の身の上の心配があって北朝鮮が核兵器を放棄するという見方は、それこそ楽観論で危険だとは思うんですが、とにかく普通ではやらないことをしている。
「リビア方式」に関しても金正恩はずっと研究している。リビアのカダフィは核放棄を迫られている最中に、2003年12月でしたが、イラクにサダム・フセインという独裁者がいましたよね。彼はアメリカに攻め込まれて、村の地下壕みたいなところにずっと隠れていたんですね。
それが分かって、捕まって、引きずり出されて、若い兵隊がフセインの顔を地面に押し付けている大きな写真がありますが、これを間違いなくカダフィが見ているんですね。
だから自分がこうなってはいけないという予告みたいなもので、彼としては独裁政権が大量破壊兵器を開発して、もしそれを放棄した場合には滅びてしまう、と。イラクの場合がそうです。大量破壊兵器があったか、なかったかは議論になりましたが。ある時点で核兵器を開発しようとしたことは間違いない。それを放棄して結局やられてしまった。カダフィは、自分はそうなりたくないと思ったが結局殺された。これを金正恩が見て、そこから教訓を学ぶのは当然なんですね。
金正恩が習近平と、あるいは韓国大統領の文在寅との会談をテレビで見ていて一つ気が付いたのは、金正恩というのは結構普通の感覚を持っている。習近平が何か言うとノートを取ったりする。理路整然と言う。だから普通の感覚がすごくあるんだなと思った。だから北朝鮮がちゃんと分かっているというのも当然だなと思います。
であればこそ、自分の身にひたひたと迫っている危険を十二分に認識しているのではないかと思います。
島田 一言だけ。実際カダフィが核放棄して数か月後に、イタリアのベルルスコーニ首相とアメリカの議員団がリビアを訪問してカダフィに会って話をするのですが、その場でカダフィが「サダム(フセイン)のようになりたくなかったからだ」と自分で言っているんですね。だからサダム・フセインが引きずり出されたのを見て、恐怖心が一層つのったのでしょうね。