米朝協議と拉致問題?東京連続集会102
◆次は北朝鮮との取引にお金をつける中国銀行への制裁か
島田洋一(救う会副会長)
シンガポール会談の前に、トランプ氏が「話し合うわけだから今後は最高度の圧力という言葉は使わないでくれ」と言っていましたが、ポンペオ訪朝以降、ポンペオ氏はツイッターでも上院の公聴会でも「非核化が完了するまでは最高度の圧力を北朝鮮にかけていく」という言い方をしています。
この「最高度の圧力」ですが、実は現在マクシマム(最高度)までやってないんです。本来は、中国の大手銀行に対する金融制裁までやればそう言えるんですが、それはまだやっていない。
その点で注目すべきなのは、月刊「正論」の最新号に書いたのですが、注目すべき人事がありました。ボルトンはロシア中心にやっていると言いましたが、ボルトンが中心であるNSCに7月初めに、北朝鮮担当部長という肩書ですが、新たに設けられた組織で、アンソニー・ルッジェーロという人が入りました。
これはボルトンが引っ張ってきた人で、先ほど言ったアリソン・フッカーさんは北朝鮮問題から外れて、ルッジェーロがボルトンの元で北朝鮮を担当することになりました。
彼は財務省に長くいて、まさに金融制裁を担当してきた、そのノウハウを持った人物です。財務省を辞めてからは国務省にいて、そこでも制裁を担当していたのですが、その後マルコ・ルビオ上院議員の政策スタッフをしていました。
ルビオは何人かの上院議員とともに、中国の大手銀行に制裁をかけろという提言を出しましたが、それもルッジェーロが書いているわけです。そういうルビオのような議会における対中国、対北朝鮮の最強硬派のもとにもいて、財務省で金融制裁の具体的なノウハウを知っていて、ここを攻めれば中国が嫌がるということが分かっている人物がNSCの北朝鮮担当部長になった。
ルッジェーロの人事は日本ではあまり報道されていないんですが、中国が非常に注目して、びびっているのではないかと思います。ルッジェーロという人は以前から、中国の四大銀行に制裁をかけるべきだ、と。つまり北朝鮮との取引にお金をつけることを止めなければ、アメリカの金融機関に口座を持たせない。そなるとドル取引ができなくなりますから、そんな銀行に国際貿易をやろうという企業はお金を預けなくなる。
具体的にはバンク・オブ・チャイナ(中国銀行)、四大銀行の四番目ですが、それに制裁をかけろと主張してきた人です。しかも実際にノウハウを持っている人が北朝鮮担当になった。
これまでは、バンク・オブ・チャイナに制裁という話があると、そこまでやるとアメリカにも跳ね返りがあるからまずいという意見が結局強くなって、踏み切れなかった。
ブッシュ政権の時にも、バンコ・デルタ・アジアとバンク・オブ・チャイナの2つに北朝鮮との関係で金融制裁をかけようと下の方から提案して財務長官に上げた。提案したアッシャー氏に経緯を聞きましたが、首脳部がバンコ・デルタ・アジアはともかく、バンク・オブ・チャイナは待ってくれということで踏み切れなかった。
ところが現在は、中国に対して、これまでのアメリカの政権ではとても怖くてできなかったことを、どんどんトランプ氏はやっています。従って、バンク・オブ・チャイナにも、北朝鮮との関係を断たなかったらニューヨークの金融市場から締め出すという動きが高まっていると思います。
これをやると北朝鮮に対して強烈なインパクトがあると思われますので、そこまでトランプ政権がいつ踏み切るかが注目すべきポイントだろうと思います。ボルトンは、「そんなものすぐにやれ」という意見です。
ポンペオ国務長官は、彼自身は次期大統領を狙っていると言われますし、まだ54歳くらいですから、イタリア系アメリカ人の期待も高まっています。本人もそれを明確に意識しています。
だからポンペオにしても、北朝鮮にたぶらかされたというようなレッテルを貼られると後の政治生命が断たれることになるので、中国の銀行に対する金融制裁を一つの重要な柱、カードにして、今後急展開する可能性もあるのではないかと思います。