米朝協議と拉致問題?東京連続集会102
◆なぜ今合同調査なのか
西岡力(救う会会長)
北朝鮮が2002年9月に、「8人死亡」と言いながら、誰についても死亡の証拠を出せなかったんです。彼らが言うことが正しいなら、その時出せばよかった。なぜ今になって合同調査なんて言うのか。
2002年に出してきた北朝鮮の通告の大筋が変わらないということを前提に、そのことについて日本と一緒に調査しようと言っているとしか思えない。このことと、北朝鮮側から、「めぐさんは実は死んでいたんだ」という謀略情報が最近いくつか出てきていますが、裏表の関係ではないかと思っています。
その死亡情報については、自由アジア放送というアメリカのラジオ放送が、「めぐみさんは実は2012年に死んだ。その遺骨が保衛部にある」と北が言っていると伝えました。こういうのが出てくる。
「その遺骨が本物か調べてみましょう。ほかの人についても調べよう」ということになる。「死亡の証拠でいいんだ」ということを言ったら、死亡の証拠を作るかもしれない。
ストックホルム合意の前後に北朝鮮の内部から、「このままストックホルム合意を進めたら被害者が殺されるかもしれませんよ」という警告がありました。その根拠は北朝鮮の工作機関が日本の技術力を調査して、「その骨が誰のものかだけではなく、いつ死んだか一定程度分かる。しかし、いつ死んだかはDNAからではなく、骨の炭素で分かる。そしてある温度で焼くと炭素はもう出て来なくて死亡の時期は分からないが、DNAは検出されてその骨が誰の骨かが分かる温度帯がある」と。
そうなると、今生きている人を殺して、ある温度で焼くと、その人のDNAは出るが死亡の時期は分からないという骨を作れる。そういうことをめざしてヨーロッパの病院で実験している、と。そういうことが起きるかもしれないということです。
政府が作った白いパンフレットをご覧になっていると思いますが、「北朝鮮側主張の問題点」が書かれています。拉致問題対策本部のホームページで見ることができます。北朝鮮が死亡の証拠として出してきたものがどのくらいでたらめなのかよく分かります。
今の政府の立場は、被害者の「死亡」を裏付けるものが一切存在しないため、被害者が生存しているという前提に立って被害者の即時帰国と納得のいく説明を行うよう求める、という基本的立場です。
「生存しているという前提に立って」というのが日本政府の立場です。和田春樹教授は、「こういう安倍政権の立場が日朝国交正常化を妨げている」と言っています。
横田早紀江さんはよく、「拉致問題は子どもが池にはまっておぼれているようなものだ。大人たちがそれを見ていたら飛び込んで助けるはずだ。助けてくださいと私たちは言っているんです」と言っています。
飛び込んで助け、病院に連れて行って脈をとって、死亡が確認された時あきらめるんです。岸で腕を組んで、「多分死んでるんじゃないですかね」とか、「姿が見えなくなったから死んでることにしましょう」と言うのか。死亡を確認するまでは、「生存を前提にする」のが日本政府の立場です。
北朝鮮が、「8人死亡」と言ったのに、8人の誰についても死亡の証拠が出せなかった。それなのに、死亡を認めるかのように聞こえる合同調査委員会とか、調査のための連絡事務所ということを公然と言う人がいる。