拉致問題の現在?なぜ今チャンスと言えるのか 東京連続集会103
◆1年経って経済制裁が効いてきた
西岡力(司会、救う会会長)
もう一つ聞いていることがあります。北朝鮮は、アメリカまで届く核・ミサイルの直前までいったのに対し、トランプ大統領は国連の安保理事会を使って強い制裁をかけました。安倍総理はもともとトランプ大統領に、北朝鮮を動かすなら強い圧力しかない。マクシマム・プレッシャー、最高度の圧力をかけましょう、と言った。
当初トランプ大統領は、「習近平は俺にまかせてくれ。100日くれ。そうしたら北朝鮮に核をやめさせてみせる」と。そして「習近平はいいやつだ。お前に任せる」と言って、去年4月の後は安倍さんの言うことをきかないで習近平の言うことを聞いていたんですが、どんどんエスカレートするので、8月、9月、12月の3回の安保理決議は実質的なものでした。
この決議の結果、北朝鮮は輸出で得ていた外貨の9割を失った。2016年に北朝鮮は28億ドル輸出していました。しかし、3つの決議の結果、いくつかの品目は北朝鮮から買ってはいけないということを入れた。それを2016年の貿易統計に適応すると、25億ドル分を越えます。つまり9割が輸出できなくなった。
北の一番の輸出品は鉄鉱石です。そして石炭、マグネシウム。それから水産物、衣料品。人件費が安いので中国は、北の中に工場を建てて、安い賃金で洋服等を作って中国に持っていっていた。それらも全部禁止になりました。
去年、北の漁船がいっぱい日本に漂着しましたね。あれは平底船なんです。遠海漁業はできないような船です。水産物が輸出禁止になったので北朝鮮は漁業権を中国に売った。中国の船が北の近海でイカをとっているわけです。近海で漁をしていた行船は、それができなくなったので、大きな船にワイヤーでつながれて大和堆まで来てイカをとっていたら台風が来たりして沈没したり、流されてきた。
今年は鋼鉄の船が来ていると言いますから少し状況が違います。去年12月の安保理決議の中で、水産物の漁業禁止の中には漁業権も含まれるとあります。今年中国の漁船が北の近海でイカを取ったら、安保理制裁になる。そこまで厳しい制裁をかけました。軍事的な圧力と、外貨を枯渇させるということです。
経済制裁の問題は、北朝鮮の貿易相手は9割が中国ですから、中国が制裁を守っているという条件で北朝鮮の外貨が枯渇するんです。今年1月から4月までは中国は守りました。それで金正恩が習近平のところに頭を下げにいったということだと思います。
金正恩の北京訪問後は少し緩みます。密輸が増えるんです。魚もかついで国境を越えてくるのがいるようです。中国の市場には北朝鮮のカニとかイカ等が出回っているようです。マツタケもそうです。
しかし、税関を通って公式に輸出する石炭や鉄鉱石は入っていない。若干外貨が入っていますが、大部分はだめというにらみあいが続いています。軍事制裁は目の前で効くんですが、経済制裁は1年経って効いてきた。