国際セミナー「激動する朝鮮半島情勢の下で拉致被害者救出を考える」全報告
◆国際社会の圧力を全拉致被害者救出にも使えるかが勝負
西岡力(救う会会長、麗澤大学客員教授)
お手元に参考資料として、「全被害者即時一括帰国を?最後の勝負は近づいている」というものがあると思います。これは11月初めに私がある所で講演したものです。
今のお二人の話で、北朝鮮が追い込まれているということが分かったと思います。この北朝鮮を追い込んだ力を「全被害者即時一括帰国」に使うことができるかどうかが勝負だと思っています。
過去に2回同じようなことがありました。ソウルオリンピックが成功して、中国とソ連が韓国を承認しようとした時、北朝鮮は追い込まれたのです。そうしたら1990年に自民党・社会党の訪朝団が行った。その時、そこにおられる有本明弘さんは、訪朝団の幹部に有本恵子さんたちから来た手紙を見せて頼みましたが、日本の政治家が追い込まれた北朝鮮の指導者に会う機会があったのに、取り上げなかったのです。
曽我ひとみさんに聞きました。曽我さんはその時、北朝鮮のテレビで日本の政治家が来ているというニュースを見て、それは白旗を掲げて日本の政治家が謝りに来たというニュースでしたが、曽我さんは内心で、「日本の政治家が来てくれたんだから、日本国民である私を助けることが議題になるのではないか」と思ったそうです。何も起きませんでしたが。
こちらが取り上げなければ、いくら北朝鮮が追い込まれていても何も起きないんです。
そして二度目のチャンスは、小泉訪朝の時でした。やはりその1年前にアメリカから圧力がかかっていた。ブッシュ大統領が「テロとの戦争」の中で、北朝鮮を「悪の枢軸」として、核開発をしていると。戦争をしてでも北朝鮮から核・ミサイルを取り上げると公開の場で言いました。
北朝鮮は本当に核を作っていたのですが、アメリカには「作っていない」と言って騙して、アメリカからただで50万トンの重油をもらいながら核を作っていたんです。それに対してアメリカは、「戦争をしてでもやめさせる」と言った。
すごい軍事的圧力がかかった時、小泉総理が平壌に行ったのです。しかしその時、日本では全員救出の体制ができておらず、北朝鮮から「8人死亡5人生存、それ以外はいない」という紙が出てきた。それを確認しないで、「そうですか」とそれを貰って、家族には「死にました」と断定で伝えたということがありました。準備ができていなかったのです。