国際セミナー「激動する朝鮮半島情勢の下で拉致被害者救出を考える」全報告
◆横田めぐみさんと田口八重子さん救出が一番難しい
西岡力(救う会会長、麗澤大学客員教授)
先ほど言いましたが、40発のミサイルと3回の核実験をしたために、アメリカが本気になって、核をやめさせようと強い圧力をかけた。去年の今頃は本当に戦争が起きるかもしれないと私は思っていました。
実は中国もそう思っていて、中国軍が中朝国境地域に集結しており、北朝鮮から大量の難民が出てくることを想定して難民収容所を作っていました。そういう中で、金正恩はアメリカが怖くなった。
核・ミサイルは完成直前までいっているが完成はしていないというのが多数の専門家の見方でしたが、金正恩は「完成した」と言って、完成したと言えばこれ以上実験しなくてすみますし、これ以上実験したら爆撃されるかもしれないということで1月から発射がない。強く追い込まれた結果話し合いが始まった。
もう一つ北朝鮮を追い込んでいるのは経済制裁です。「最高度のプレッシャー」という言葉を安倍総理が使いながら、国連の議論をリードして、去年の8月、9月、12月の国連の経済制裁は、北朝鮮が貿易で得ていた収入の9割をなくす厳しいものでした。
一国の貿易収入の9割がなくなったらどうなるか。それが今年の9月で1年になった。去年9月から制裁が始まっただけで北の経済成長はマイナス5%になりました。今年は1月からその状態が続いている。
先ほど金聖玟さんとお昼を食べながら話を聞いたんですが、新義州と丹東の間の物流はほぼ止まっている。中国もアメリカの目を気にして制裁を守っている。白頭山を越えて山の向こう側から若干物流があるのですが、しかしかなり止まっていて制裁は効いている。
だから先ほどの金聖玟さんの話で、「9月から自給自足でやれ」という政治学習資料が降りてきて、人民たちは、「そんなことを言っても俺たちは松の木の皮を食べるのか。雑草をまた食べるのか」と言っている。
しかしアメリカは、北朝鮮が核を完全に放棄するまで制裁を維持する、強化すると言っている。そしてそのアメリカを初めとする国際社会に拉致問題の認識が広まっていると今古森さんの報告にありました。
今北朝鮮を追い込んで、その圧力を拉致被害者を取り戻すのに使えるかもしれない。これは自動的にそうなったのではなくて、我々もずっと努力してきましたが、何といっても安倍総理が戦略を書いてトランプ大統領にも話をし、国連の制裁もし、こういう枠組みを作ったと思っています。
枠組みはできた。しかしこれからが最後の勝負になる。私たちは「全被害者の即時一括帰国」と言っていますが、前回のように5人とか6人とかで他の人が置いていかれるようなことにならないためにどうするか。
北朝鮮の内部では、全員は返したくない。拉致問題に触れないと日本からお金が取れないことは分かっている。全員は返さないで、何人かで終わらせて、特に、残念で申し訳ないんですが、今日ここに横田早紀江さんも飯塚繁雄さんもおられますが、横田めぐみさんと田口八重子さんが一番難しい。
でも家族会の前代表と現代表が一番難しいということは、北朝鮮も分からなければいけない。その難しい人も含めて全員返さないと、日本人は「よかったな」とは思いませんよ。
その二人を含む「死亡」とされた8人は、金正日が、「この人たちは秘密を知りすぎているから死んだと言え」と決裁した人たちです。今度は新しく金正恩が決裁する。金正恩からもう一度「この人たちを出すな」という決裁が出ちゃったら、金正恩時代はもうだめです。ほぼ難しい。
ここで、「じゃあ日本から金を取るためには秘密は知ってるかもしれないけれど、それよりも制裁を解除してお金を優先しよう」と思わせなければだめです。しかし、そういう選択肢が上がってくるところまでは来たというのが私の認識で、まだ難しい問題はあると思っていますが、その問題については後でお話します。
島田 ありがとうございます。北朝鮮の体制は金正恩と妹の金与正がすべて仕切っていると私は思っていますが、北朝鮮側としては6月の段階でトランプ氏を騙せたとある程度思っているかもしれないけど、騙されてないという認識になっているとしたら、正恩と与正としては、この状況を打開するためにどうしようと思っているでしょうか。
ここで討論を一旦止めて、デビッド・スネドンさんのお兄さんのジェームス・スネドンさんが今こられましたので、一言挨拶をお願いします。彼は日本語がうまいですから。