国際セミナー「激動する朝鮮半島情勢の下で拉致被害者救出を考える」全報告
◆雲南省は脱北者の逃亡ルート、そこに北朝鮮の工作員も
古森義久(ジャーナリスト、麗澤大学特別教授)
これはおかしいということで調査が始まったのです。しばらくは分からなかったのですが、北朝鮮政府の工作員がかなり活発に動いていた。アンダー・グラウンドのルートといって、北朝鮮から逃げてくる人たちが、どういうわけかずっと中国の端を回って雲南省に来て、雲南省からミャンマーに入るのがルートだそうです。
同時にアメリカのキリスト教系で北朝鮮の民主化を助ける、あるいは脱北者の方々を支援する人たちがいて、この人たちを捕まえようとして工作員が来ていた。このことが裏付けられて、大分時間が経ってから、これは西岡さんの中国公安筋による情報で、「北朝鮮の工作員が連行していった」と。
これは後から出てきた話ですが、北朝鮮ではちょうどその時期に、曽我ひとみさんのご主人、チャールズ・ジェンキンスさんが出国した。ジェンキンスさんは北朝鮮の要人に英語を教えていた。その英語の先生がいなくなった。たまたまそのタイミングが重なったということです。
こういう場でいうのも何ですが、北朝鮮の諜報関係者、軍の関係者とヨーロッパでしばらく交渉があったのですが、そこに行ったアメリカ側の人の話を聞いたら、以前の彼らの英語と最近になっての彼らの英語の質が変わったというのです。
これは失礼な言い方かもしれないけども、ジェンキンスさんが教えていた英語と、デビッド・スネドンさんが教えた英語が違うことの例証です。これらはみんな状況証拠です。
特に日本の救う会から与えられた情報というのは、状況証拠の中でも確実性が高い。その後、死体が全然みつからない。中国は警察国家ですから外国人がいた、事故を起こした、しかも死んだかもしれない、そういうことが起きれば確実に分かるんですね。しかしスネドンさんは全く出てきていない。消去法もあって、やっぱり北朝鮮に連れて行かれたのではないかとの疑いが強くなって、議会でユタ州出身の議員からどんどん広がっていった。
ところが当時、国務省は全然乗り気じゃない。オバマ政権だったのですが、中国への配慮などもあって、とにかくなかなか動かない。私も公の場で国務省の次官クラスに、「デビッド・スネドンのケースはどうなんだ」とCSISという研究所、公の場で質問したことがあります。
すると、「その問題はセンシティブであるから答えられない」と言ったんです。なので議会でどんどん広がって、決議案が採択された。下院で1年半くらい前、全会一致で可決された。そして今回上院でも全会一致で可決された。
この1年半くらいずっと持続性があったというのは、スネドン家の熱意、あるいは日本側からの連帯、応援があった。特に古屋圭司議員は、何回も上下両院を訪れています。スネドン事件を解決する、少なくとも調査することの重要性をずっと訴えていた。