2回目の米朝首脳会談と北朝鮮内部事情-東京連続集会報告
◆漂流船は制裁破りの結果
西岡 力(救う会会長、モラロジー研究所教授)
一昨年、8月、9月、12月に国連安保理の制裁があり、北朝鮮は輸出で得ていた外貨約28億ドルの内、25億ドルを失いました。約9割が北朝鮮から買ってはいけない品目になったのです。北朝鮮の輸出のナンバーワンは石炭でした。そして鉄鉱石。さらに水産物。全部買ってはいけないことになりました。
少し余談ですが、今日の新聞で、「北朝鮮は中国に漁業権を売っていた」とありました。つまり水産物の輸出ができなくなったので、近海で本来北朝鮮の漁民がとるべきイカ等を取らせてお金をもらっていた。
国連安保理はそれに気づいて、一昨年12月の制裁決議では、「水産物の輸入禁止の中には漁業権を買うことも含まれる」と明記したのに、中国はそれを破って去年漁業権を買っていたという国連の制裁パネルの報告書があったことが報道されていました。
近海で、北朝鮮の漁船が操業できなくなって、本当は近海にしか出られないイカ釣舟のような小さな平底の舟が、ワイヤーで引っ張られて大和堆までいって操業し、遭難して日本に流れ着いている。
私は今年も漂着が多かったので、北朝鮮が制裁破りをしていた証拠じゃないかと思っていたのです。今年漂着船が少なくなれば漁業権の販売はなかったということになるんですが、今年も多い。そうしたら国連のパネル報告でもそういうのが出ています。
そういう制裁破りがありますが、石炭とか鉄鉱石は密輸できないんです。私の知り合いが、ある北朝鮮の炭鉱に勤めている人間から直接聞いた話ですが、今掘った石炭が露天に山積みになっています。北朝鮮の中で石炭の価格が下がっても誰も買わない。中国に売れなくなったのでだぶついているんです。
90年代の半ば以降、普通の北朝鮮の庶民への配給が止まったので、自分で商売をして食べているんですが、石炭の炭鉱の工夫たちはその後も配給で食べていた。ところが制裁の結果石炭が売れなくなったので、工夫たちへの配給がなくなった。そして工夫たちの栄養失調が始まっている。
工夫たちの家庭というのは今まで商売をしないで食べられたので商売の仕方を知らない。それで今まで恵まれていた工夫たちの家庭から餓死が出始めた。そういう直接情報を聞きました。
魚みたいなものは、かついで中国に行って密輸しているんですが、石炭はかついで行っても大した額にはならない。貨車で売らなくてはならないがそれができない。
中国は北朝鮮の石炭を買わなくても、他から買える。無理して瀬取りみたいなことをして石炭を密輸しても合わないんです。他でも買えるものですから。北朝鮮が瀬取りで石油の密輸をするのは、彼らが買いたいからです。瀬取りするには普通より費用もかかります。そのためには外貨も必要です。ところが外貨もなくなってきているということです。