2回目の米朝首脳会談と北朝鮮内部事情-東京連続集会報告
◆アメリカまで届く長距離ミサイルを中国に搬出することで制裁解除なのか
西岡 力(救う会会長、モラロジー研究所教授)
そういう中で、私が年末に聞いた情報では、以上のことを背景にして、平壌の中枢の中で、政策をめぐって大議論が起きている。それまではアメリカに対して6月の会談でトランプをうまくだませた。米兵の遺骨を出した。核実験場を爆破した。その見返りをまずくれと言う。サラミのように少しずつ見返りを取ると言っていたんですが、トランプ大統領は、「金正恩はいいやつだ」とか言いながらも制裁は緩めない。むしろ強めている。
その結果国内で不満が高まっているのでもう少しカードを切らなければならないのではないかという議論が出ている。私が聞いた段階では「検討されている」ということでしたが、アメリカまで届く長距離ミサイルを中国に搬出する、そして寧辺の核開発施設を廃棄するというカードでアメリカと交渉して、終戦宣言や経済制裁の緩和を取ろうという話が出ているとのことでした。
そうしたら事態がその方向に動いている。中国に搬出するということがあるので、金正恩は近く中国に行くだろうと、その情報源の人が言っていましたが、そうしたら1月7日から10日まで訪中がありました。
そこで、配布資料にありますが、「朝鮮中央通信」によると、「習近平が北朝鮮の主張に全面的に同意した。中国は今後も朝鮮半島の安定のために積極的で建設的な役割を果たしていく」、非核化協議のプロセスについて「中朝が共同で研究・調整していく」と報道された。
そういう表に出た言葉と、大陸間弾道弾を中国に搬出するということが、同じことを言っている可能性があるのではないかと思っています。
ただ、ポンペオ米国務長官が、「完全で最終的な非核化に到達しなければならない」、「米国民に対する(北朝鮮の)リスクを減らし続けるアイデアを巡り、我々は前進している」と言った。「前進している」と言っています。「米国民の安全」と「長距離ミサイルの搬出」はイコールです。
そしてトランプ大統領が金正恩に親書を送った。そして金正恩の親書を持って金英哲(キム・ヨンチョル)副委員長が来た。そして二度目の会談を今調整している。
つまり、制裁が効いてきた結果、制裁を緩めるために北朝鮮はサラミを一枚出した。米兵の遺骨と実験場の爆破では取れないと分かって、アメリカに届く長距離ミサイルと寧辺の破棄で何か取ろうとしている。
トランプ政権が効いているカードを使ってしまったら、これまでの努力が水の泡になりかねない。まさにブッシュ政権の後期に、寧辺の核施設の煙突を爆破するショーを見て、ヒル国務次官補、ライス国務長官のラインは一番効いていた金融制裁を解除してしまった。しかしその後核実験が続いて、核も北朝鮮は止めなかった。そういうことになってしまうかどうか。制裁が解除されるかどうか。