家族会・救う会の新運動方針と米朝首脳会談-東京連続集会報告
◆アメリカの情報力を甘くみていた
西岡 力(救う会会長、モラロジー研究所教授)
国連制裁というのは基本的に核でかけているものです。寧辺の核施設は、核を作る施設のごく一部でしかない。それを止めたらほぼすべての制裁が解除されるというのは、あまりにも甘く見ている。そういうことで、これを呑んだらトランプ大統領は、外交的に失敗したと言われることはほぼ明確でした。アメリカの安全は確保されてないわけですから。
寧辺でプルトニウムを作るのを止めても、既に核弾頭は持っているだろうし、ミサイルは完成直前まできている。それには何も触れないで、これ以上作りませんよと。しかも一部の施設だけで制裁を解除してくれと。これがなぜ通ると思ったのかというのが最初の疑問でした。
だから決裂したのは当然だし、これで合意したらトランプ大統領は国際社会を裏切ったことになる。アメリカをも裏切ったことになるひどい条件だったということです。
だとすると、なぜ北朝鮮はこれでまとまると思っていたのかということが疑問になるわけです。誰が金正恩のところに、「トランプはここまで譲歩してきますよ」というペーパーをあげていたのか。何が根拠だったのか。
北朝鮮は異例なことに、出発の時からリアルタイムで首脳会談の報道をしたんです。会談1日目の報道もして、「うまく行っている」、「うまく行っている」と。うまく行くと思っていたのではないかということです。しかし、うまく行かなかった。
それに対するヒントはトランプ大統領の記者会見にありました。「あなたは寧辺の廃棄を言ったのか」と聞かれて、「そうだ。北朝鮮も寧辺の廃棄を言った。しかし非核化にはそれだけでは十分ではない」と言った。
「では寧辺以外の二か所目のウラン濃縮施設についても言及したのか」との記者の質問に対して、「そうだ。多数のことを取り上げた。彼らは我々がそんなことまで知っているのかと驚いた」と。「一つが解決したからといって制裁のテコを全部手放すわけにはいかない」と言ったのです。
ここで頭の整理のためですが、北朝鮮はどのような核製造施設を持っているのか。北朝鮮はもともとプルトニウム爆弾を作ろうとしていました。これは長崎に落された原爆と同じです。プルトニウム爆弾を作るためには原子炉が必要です。
1986年に寧辺にある5000キロワットの原子炉が臨界に達した。80年代から作っているのです。原子炉でウランを燃やして、それを取り出して、使用済燃料を再処理する。その中にプルトニウムがあるんです。他のものも混ざっていますからプルトニウムだけを取り出すのを再処理といいます。
その再処理施設も寧辺にあります。寧辺でプルトニウムを作っているわけです。しかし寧辺にはもう一つウラン濃縮施設があります。これは広島型の爆弾と同じです。北朝鮮には天然ウラニウム鉱山があります。遠心分離器の中に入れて、グルグル回して、比重が違うので回すことで濃縮できる。確か80何%から90何%くらいの純度の高いものにすると爆発物質になる。
これは原子炉はいらない。遠心分離器を回す電気さえあれば地下でも作れる。しかし、寧辺の原子炉のすぐ横に8000本の濃縮工場があると言ってアメリカ人の学者に見せたんです。ヘッカーさんというアメリカ人の親北学者がいるんです。その人にわざわざ見せた。