家族会・救う会の新運動方針と米朝首脳会談-東京連続集会報告
◆人権問題が相手の姿勢を見る上での評価基準
島田洋一(救う会副会長、福井県立大学教授)
まだ色々ありますが、一つだけ言えば、トランプ氏が今回の首脳会談について最も慌てた局面が一つだけありました。それは直後にオットー・ワームビア氏の両親が発したメッセージです。
ワームビア青年は、いうまでもなく北朝鮮で拷問を受け事実上殺害されましたが、その両親が首脳会談直後に、「歯の浮くような賞賛をいくら投げつけようが、金正恩の体制にオットーを殺した責任がある。そして無茶苦茶な人権抑圧の責任がある。この事実は動かない」と。
記者会見の場で、オットー・ワームビアの件をどう思っているんだと質問したのはワシントンポストのデビッド・ナカムラという日系の記者です。我々もワシントンで彼の取材を1時間近く受けたことがありますので、デビッド・ナカムラという人は拉致問題をよく知っている記者です。
もっと時間があったら彼が(拉致問題を)聞いてくれたかもしれないんですが、アメリカのリベラル派はもちろんのことですが、「人権問題をトランプはしっかり出さなかった」と。
同じく決裂に終わった1986年10月のレーガン・ゴルバチョフのレイキャビク会談では、2日目の午前の1対1の会談でレーガンは人権問題にちょっと触れる予定さったのですが、レーガンが北朝鮮の人権抑圧の事例をずらっと書いたリスト、釈放を要求する政治犯の名前を書いたリストをゴルバチョフに突き付けて、一人ひとり説明させてもらうと言った。
ゴルバチョフがそれに反論して、激論になって、70分以上人権問題でやりあった。ゴルバチョフはその場では言質を与えなかったが、2か月後、最も有名な人権活動家で物理学者のアンドレイ・サハロフを釈放した。
レーガンはその時に、「我々の間で核問題で何を取り決めようが、人権問題で顕著な進展をみせなければ議会が認めない」と。「だから人権問題で顕著な措置を取れ」と繰り返しゴルバチョフに言っています。
それでゴルバチョフの方も、人権問題で何らかの措置を取らなければいけないということで、田舎の方に軟禁していたサハロフをまず解放し、次々に政治犯を釈放していった。
それでアメリカ側も、政治犯を釈放するんだったら本当にゴルバチョフは改革意思を持っているなということで、翌年ゴルバチョフの訪米大歓迎となりました。ゴルバチョフなら色々取り決めをしても大丈夫だという方向に行った。
やはり人権問題でしっかりした措置を取るかどうかが、相手の姿勢を見る上での評価基準、メルクマールなんだという意識をレーガンはしっかり持っていた。トランプ氏はこの点、若干意識は薄いと思いますが、日本が人権問題の一つでもある拉致をしっかり助けてくれということを常に言っている。
アメリカでもオットー・ワームビアの両親は相当な影響力が今ありますから、その両親が声を上げるということで、今後アメリカとしては拉致も含む人権問題をこれまで以上に取り上げざるをえなくなると思います。その分我々にとってのチャンスも広がってきます。