家族会・救う会の新運動方針と米朝首脳会談-東京連続集会報告
◆トランプ大統領が保証人と見て拉致問題を進める可能性
西岡 力(救う会会長、モラロジー研究所教授)
しかし、国際制裁がどんどん上がってきました。北朝鮮も日本からいくばくかの人道支援をとろうとは思っていません。大規模な経済支援を取ろうと思っています。複数の情報で確認できています。
北朝鮮内部で言われている金額は100億ドルですが、今200億ドルとろうという話もあるそうです。1兆円とか2兆円という額です。韓国との間で1965年に5億ドルの経済協力がなされた。物価を考えるとそれが100億ドルくらいではないかとのことです。
田中均元外務省局長が2002年に100億ドルを約束していたという情報があります。北朝鮮に当時いた幹部たちの間で複数出ています。一番最近では太永浩(テ・ヨンホ)さんというロンドンにある北朝鮮大使館から亡命してきた外交官が去年出した本にそう書いています。そういう金額です。
小泉訪朝の時に総理大臣がサインしたのに取れなかった。北朝鮮の中では、アメリカが反対したから取れなかったとなっています。実際半分はアメリカが反対したから取れなかったのです。核開発が進んでいるのに日本だけが突出して経済協力をしてもアメリカは反対します。
もう一つは、5人しか返さなくて、8人死亡とか4人未入境という嘘をついたので我々が世論と一緒になって反対したから止まったのです。その2つなのですが、北朝鮮は世論というのをあまり分かっていないのでアメリカの方を重視しているわけです。
しかし我々は今回、全員帰ってきたら、我々が世論と一緒に止めたという自負がありますから、返してくれれば反対しないというメッセージを出したわけです。
一方トランプ大統領は先ほど島田さんが説明したように、「俺は不動産業者だ。これは金がもうかるぞ。ここにホテルを作れ」と言ったということです。「しかし俺は金は出さない。金はシンゾーのところに行け。シンゾーは拉致と言っているぞ。拉致の話もしろ」と。トランプ大統領のディールの中に拉致問題及び日本のODAが含まれている。だから二度も言ったんだと思います。
もちろん安倍さんとの信頼関係もありますが、それがアメリカの国益になると思わなければ、何分しかない時間の中で拉致を2回も言うというのは異例です。それはセットになっているわけです。こういうセットを作ることに安倍外交は成功した。
我々は小泉訪朝型ではなく、カーター訪朝型で今進んでいるわけですが、カーター訪朝型の時には拉致問題は無視されました。そしてジュネーブ合意というのができて、日本に10億ドルの請求書が来たんです。KEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)が作られて、「45億ドルでプルトニウムを作りにくい原子力発電所をただで作ってあげます。だから寧辺の原子炉を止めなさい」という取引をしたんです。
北朝鮮は、「止めます」と言った。45億ドルかかる発電所を作るがアメリカは出さない。議会の反対があって出せなかった。それで30億ドルを韓国が負担、10億ドルを日本が負担、5億ドルをEUなどが負担することになった。
そして村山政権は「10億ドル出します」と言った。その時条件に拉致を出さなかったのです。拉致が無視されて多額のお金が日本から行ってしまう。その時日本政府は拉致を知らなかったのか。そんなことはないです。皆さんご承知の梶山答弁は1988年にあった。そしてジュネーブ合意が94年なんです。
でも日本が言わなかったから拉致は条件にならなかった。そういうことは絶対再現させてはならない。核問題で米朝間に何らかの合意ができた時に、「核も日本にとって大切なことだろう。せっかく俺が合意を作ってやったのだから日本も金を出せ。拉致のことなんか言うな」とトランプ大統領が言う危険性もゼロではない。
しかしトランプ大統領の口から拉致問題が出ているということは、そういうことは起きないということです。そこまで持っていくことができた。
そして最近分かったのですが、北朝鮮は日本から本当に金がほしいと思って色々と検討している。その中で、「安倍を本当に信用できるのかどうか」という議論がある。「安倍は2002年に国交正常化に反対した奴じゃないか。5人を送っても金を出さなかったじゃないか」。官房副長官でしたからもちろん権限はなかったのですが。
だから、「全被害者を返したら本当に経済協力をするか。それ以外の問題を出してきて北朝鮮をつぶそうとするのではないか」という検討をしている。一度5人を送った時お金を取れなかったのですから当然そう思うでしょう。
そして、「西岡などというのは反北朝鮮の権化みたいな奴だけど静かにすると言っている」と。「では安倍はどうなんだ」と。「帰ってきた人から聞き出して反北をやるんじゃないか」と。
その時にトランプ大統領が、「北朝鮮は豊かな国になれる」と言って、「核・ミサイルは止めなさい。拉致被害者も返しなさい」と言った。ということは拉致を返して、核・ミサイルの合意ができている時に日本がそれを裏切ったら、トランプが「俺の顔に泥を塗るのか」となる。
北から見ると、トランプ大統領を保証人として立てて、核・ミサイルでトランプ大統領が満足することをやり、拉致で安倍が満足することをやったらODAが出る。そういう枠組みの中でトランプ大統領が2回も言ったことで、そういうことができたのではないか。
トランプ大統領も、「ここを開発すればいい。俺は金を出せないから安倍に行け」と言った。それで北朝鮮と交渉しているのに、安倍が出さないとなったらトランプは嘘をついたことになる。そう北朝鮮も判断するでしょうから、取引を成立させる枠組みはかなり成立しつつある。