訪米報告と米大統領面会報告、最新情勢報告-東京連続集会106
◆同盟国アメリカとすり合わせなしで日朝国交正常化に走った日本
西岡力(救う会会長)
そういうことを考えていたのですが、金正日も逆に同じことを考えたわけです。当時韓国では金大中政権の末期で、大統領選挙の直前だった。金大中は息子が捕まったりしていましたから既に人気がなく、保守野党が勝だろうと言われていました。
当時、弁護士の盧武鉉(ノ・ムヒョン)は3位で、2位が鄭夢準(チョン・モンジュン)というサッカー協会の会長で、現代重工業の会長だった。ところが財閥の会長と人権弁護士が2、3位連合をして、世論調査の結果盧武鉉が勝って盧武鉉人気が急上昇した。
北朝鮮も盧武鉉が勝つとは思っていなかったと思います。9月の時点では、韓国はもう一度保守政権に?ると。そういう中でアメリカが軍事行動をしようとすれば、在韓米軍、在日米軍の基地を使わざるを得ない。日本と韓国をアメリカから引き離さないと、自分の命が危ないと。
これが小泉訪朝の背景の圧力の部分です。そして拉致を認めるという大技まで出して小泉総理を平壌まで連れてきた。
そしてここが重要なんですが、アメリカから見ると小泉訪朝は大変疑わしいものでした。我々から見て小泉訪朝は拉致被害者救出を最優先にしていない。「死亡」と言われて、その確認もしなかった田中均さんたちを批判しましたが、大きく言うと、当時の外交が失敗したのは、同盟国であるアメリカとすり合わせをしないで、日朝国交正常化に走ったことです。
アメリカは北朝鮮が、94年のジュネーブ合意を破って核開発をしているという確実な証拠を握ったからから「悪の枢軸」演説になったんです。その核を止めていない北朝鮮に、100億ドル、1兆円程度の大規模な経済支援をしようというのが平壌宣言だったんです。
この100億ドルという数字は、昨年12月の我々の国際セミナーで張哲賢(チャン・チョルヒョン)さんという統一戦線部の元幹部が話しました。また今月、太永浩(テ・ヨンホ)さんという元駐英北朝鮮公使で韓国に亡命した人が、その人の本が日本で翻訳・発売されるということで東京に来るようですが、その本の中でこう書かれています。
2002年に太永浩さんは、イギリスに派遣される前に外交部にいた。金正日が拉致を認めた時に、外交部ではみんな動揺したそうです。金正日将軍様に拉致を認めさせて謝罪までさせてしまった。我々の外交の失敗じゃないか。どう謝ったらいいのか。そうみんな思っていたそうです。
金正日が小泉さんと会った時は、統一戦線部という党の機関の金容淳(キム・ヨンスン)ではなく、外交部姜錫柱(カン・ソクジュ)第一副部長が分析していたんです。外交部主導だった。動揺している幹部たち全員を講堂に集めて、姜錫柱が、「大丈夫だ。日本から100億ドル来るんだ」と言った。これは太永浩さんが直接、姜錫柱から聞いているんです。私は韓国語の本を読みましたが、今回の本にそのことが書かれています。
100億ドルというお金が出口にあり、そしてアメリカの軍事圧力があった。それで拉致を認めるところまで行ったわけですが、アメリカからすると、核開発を地下でやっている国に日本が急接近する。しかも事前の打ち合わせもない。