訪米報告と米大統領面会報告、最新情勢報告-東京連続集会106
◆兵士たちが飢え始め軍が維持できなくなっている
西岡力(救う会会長)
そして39号室資金という独裁が必要とする外貨が減ってきている。一部で人民の生活が苦しくなって餓死が出ているようですが、90年代のような大量餓死は発生していません。
90年代から一般住民は配給なしで暮らしてきたので、何か食べる手段を持っている。山で焼畑をやってり、親戚がそんなことをやったりしている。国際制裁も、食糧を北朝鮮に輸出することは禁止していないんです。ただ外貨がないから買えなくなっている。
それより困っているのは幹部たちです。国家保衛部の幹部たちの配給も少なくなっている。私が聞いたのは、それが全国的なことかどうかは分かりませんが、地方では米ではなく、ある時はとうもろこしだけとか、小麦粉だけとか、戦争中の日本みたいですが、そのようになっています。
中央の保衛部は本人の配給はあるが、家族の分がない。保衛部は政治警察です。それがなくなったら独裁が維持できないのに、そこまでなっている。
今一番大変なのは軍です。兵士たちが飢え始めている。昔は軍隊に行くと党員になれた。そして一番下の敵対階層の人は軍隊に行けなかった。義務教育を終わると炭鉱などに送られます。それを賄賂を使って軍隊に入れてもらって、軍で功績を上げると党員になれた。
ところが今は、賄賂を使って偽の診断書を作ってもらい、息子を軍隊に送りたくないという親が増えている。軍隊に入れたら栄養失調で死んでしまうかもしれない。実際に栄養失調が続出しています。
最近の軍の食事について聞いたら、粒にしたものでなく、そのままのとうもろこしを塩茹でにしたもの、それも飼料用とうもろこしで、それに塩のスープと白菜の塩漬けだそうです。唐辛子が入っていないので、キムチとも言えないそうです。そればかり食べていたら栄養失調になる。
少し余裕のある人は、部隊の前の民家にお金を送って、三日に1回くらい、息子が出てきたらご飯を食べさせる契約をするんです。軍隊の上官たちも、時々抜け出して飯を食いにいくことを黙認している。兵士たちが栄養失調になったら責任を問われるからです。しかし、上からは食糧がそれほど来ない。だから黙認する。
軍が維持できなくなっています。20年前に大量餓死がありましたが、今は軍に17歳で徴兵される時、身長や体重の制限があったのですが、それを満たす人が少なく、定員が満たない。それで身体障害者以外全員入れろということになった。栄養失調で小さく育った人もいるから、ほぼ体格が悪いんですが、軍に入るとまた栄養失調になる。国会機関が維持できなくなっている状況です。
我慢比べではありますが、金正恩が、アメリカは核問題で譲歩しない、日本は拉致問題で譲歩しない。しかし譲歩すれば取引は成立するという客観情勢を正しく認識するのか、アメリカも日本も信用できないから何とか韓国から金を取る方法を探そうとするのか、アメリカはまだ騙せるという判断をするのか、今回のハノイの失敗の原因を彼がどう判断するのかですね。
今の所、日朝首脳会談の日程が決まるというようなことはないようですが、日本との関係をどうするか、検討が始まっているという情報があります。ただ、彼らが求めているのはスモール・ディールではなく100億ドル以上、最近の話では200億ドルを想定している、2倍になっているようです。
それが去年10月の徴用工、いわゆる戦時労働者の判決で、1965年の協定を否定して韓国が賠償金が取れるとなったら、うちも取らなければとなる。100億ドルは請求権資金で、賠償金が100億ドルという話もあるのです。
市場の買い物のようなもので、最終的には交渉になる。こちらは出せないものは出せないのですが、そういうことを狙っているのは間違いない。それが欲しいのなら、アメリカとの交渉がまとまらないのに日本は出さないだろうということも一定程度分かっている。