第25回「労働党第八回大会について」
皆さんごきげんよう救う会テレビです。今収録しているのは令和3年1月16日です。第25回のタイトルは、「朝鮮労働党第8回大会について」と題してお送りいたします。
◆金正恩が総書記に
異例だったんですけども、8日間ずっと大会が開かれていました。5日に始まった。ところが5日の日は何の報道もなかったのです。北朝鮮の中でも、5日に平壌で大会が開かれたということを地方の人が知らなかったと、6日に朝になって労働新聞と朝鮮中央通信が、「昨日から開かれています」と報道しました。
引用なのですが、金正恩が活動報告を3日間行った。
合計9時間というふうに報道されていますけれども、私が内部から聞いたのはもうちょっと短かった。「1回2時間とか1時間半で彼は退席した」と。
だからとにかく9時間でも3時間ですよね。1回午前にやって午後は何もしなかったかもしれない。こんな長くダラダラと続ける必要はなかったんじゃないか。
金正恩の健康について今後との関連付けて、「まだ良くなっていないんじゃないか」という人がいます。そしてその報告を受けて、「金正恩がいいこと言った」とみんなが討論して、その中に李炳哲(リ・ビョンチョル)という、ここに出てくるこの人はまあ軍人ですね。核ミサイル開発の責任者だった人ですけど。
その次の李良権と書いてある。イー・ソンゴンですけども、これは外務大臣。軍人出身の外務大臣ですけども、その隣の趙甬元(チョ・ヨンウォン)という人、この人の名前ちょっと覚えといてほしいんですけど、ここでもかなり出てきた。彼は党官僚なのですけれど、組織指導部というところに長くいた人ですけど、彼が大出世した。
そして討論が次の日も続いて、それから規約の改正などあって、そして10日に選挙をしました。中央委員会の選挙をするのですね。中央委員会総会で今度は党の幹部を選ぶというやり方をしました。
そこで金正恩が今まで朝鮮労働党委員長と言ってたのですけど、総書記になったということがありました。また人事についていくつかの特徴があったのですが、それも後で追いたいと思います。
まず全世界が注目したのはですね、金正恩の妹の金与正が党の政治局委員候補だったのですが、その上に政治局員、政治局委員というのがあって、その上に常務委員というのがあるのですが、常務務員になるのではないかと言われていたのですけど、逆に政治局員候補から落ちてしまった。平の中央委員になってしまったということがあります。
そして、最後に決定書を採択して大会終了。閉会の辞を金正恩が述べて終わったということです。
◆趙甬元が2段級昇進
人事について労働新聞から取ったものですけれども、この四人が金正恩のすぐ下の常務員ですね。一応金正恩も常務委員ということになってますけども別格ですから、
崔竜海(チェ・リョンヘ)、李炳哲(リ・ビョンチョル)、
金徳訓(キム・ドクフン)、そして趙勇元(チョ・ヨンウォン)
このメガネかけてる人が趙勇元なのですね。
そして これが新しい政治局委員です。金才龍(キム・ジェリョン)という人ですけど、もともと総理大臣をやっていたのですけども組織指導部長だという風に書かれています。
実は今回我々北の専門家からすると驚くべきことがあってですね、この写真を見ると肩書が書いてあるじゃないですか。ハングルで。この金才龍さんの所には党中央委員会組織指導部長とわざわざ書いてあるのですね。今までこういうことはなかったのです。
党中央委員会部長と中央委員会第一副部長と中央委員会副部長ということしか書いてなくて、一体彼はどの部の部長なのか、どの部の第一副部長じゃないのかということをいろんな情報から推測したり、あるいは亡命者の証言から特定したりしてたのですけども、教えてくれたのですよ。
特に党組織指導部長というのは、まあ大変な地位、権力のある地位なのですけど、この金才龍という元々総理大臣をやっていた経済官僚がついたと。
それから一つ飛ばして横ですね。金英哲(キム・ヨンチョル)がまだ政治局委員として留任したのです。けれども彼は党中央委員会統一戦線部長と書かれている。これの意味についても後でお話ししたいと思います。
それからまあこれが政治局員候補のリストです。ここで重大なのは金与正がいないということです。先ほどの3枚の写真の中に金与正はいないわけです。ここの候補にいたのがいなくなってしまったということです。
今もう一度おさらいしますと、これが朝鮮中央通信が発表した人事ですけども、金正恩が労働党の総書記になった、肩書は委員長から総書記に変わった。総書記という肩書きは金日成が使っていた肩書、金正日が使っていた肩書です。それを彼は今まで使わないでいたのですが、今回おじいさんやお父さんと同じ肩書になって、常務委員が5人いますが、そのうち趙甬元(チョ・ヨンウォン)が上に上がった。
朴正根(パク・ジョングン)という経済官僚で総理大臣もやった人が落ちた。そして政治局委員にも趙甬元が上がってきた。趙甬元は、実は金与正と同じ政治局委員候補だったのです。候補だった金与正が政治局員になり、そして常務委員になるのではないかと言われたのですけど、彼女じゃなくて同じ政治局員だった趙甬元(チョ・ヨンウォン)が2段級昇進したというのが今回の人事の一つの特徴だと思います。
それから組織としては先程言いましたけども、金正恩の肩書が党委員長から党総書記になった。そして2015年に新設した政務局が書記局に変わりました。昔の書記局に戻った。
書記局を政務局という名前にして、そして書記という名前を廃止して副院長としたんですね。院長がいて副院長がいるということだったのですけど、副院長がたくさんいたのでなんか院長がそれほど偉くないようなふうに思われたのではないかということで、どうも金正恩が自分の権威が上がらないのはこの2015年の肩書のせいじゃないかと、父親やお爺さんと同じ総書記にもうなってもいいんじゃないかといったようなのですが、2015年にこの肩書あるいは政務局という体勢を作ったのは金与正が側近を使って設計したという情報を最近内部から得ました。
◆総書記就任はまだ早いと反対した金与正
そういうこともあって金与正は総書記就任はまだ早いと反対した。そのことも今回金与正が政治局委員候補から外れたことの背景にあると。そしてそれだけではなくてですね、金与正に権力が集中し外部の関心も集まり、その結果金与正に直接繋がるグループ、幹部のグループができ始めている。それを金正恩は大変よく思わないで警戒した、と。
個人独裁体制というのは派閥を作らせない。すべての幹部たちが自分に直結して、自分の言うことだけを聞くということで成り立っているわけですけども、いくら妹でも妹の方に直結する幹部グループできてることを警戒したという話があります。その事とこの肩書や体制の問題も若干の関係があったということです。
そして実は金与正は第一副部長でもあったのですけども、それが今ただの副部長になったのですね。金与正が第一副部長だった。どこか分からかなった訳ですけど、ただ様々な情報から多分組織指導部だと言われていた。組織指導部の部長は一応いましたが、金与正が第一副部長で事実上仕切っていた。
組織指導部は幹部の人事権、それから幹部や全人民の思想検閲権、そして政策を金正恩に提案する窓口、すべての政策書類が組織指導部から上がっていくというようなことがあってですね、党の中の党と言われる一番強い部署なのですね。
国家保衛部に勤めてた友人にですね、国家保衛部つまり政治警察ですね、みんな恐れてる、泣く子も黙る国家保衛部ですけども、「国家保衛部と組織指導部のどっちが強いんだよ」と、そういう直接的な質問をしたこがあるのですよ。
「何言ってんですか、組織指導部に決まってるじゃないですか。組織指導部があの男は政治犯だと決めると、そしたら我々は捕まえに行くのですよ」と言っていました。
◆組織指導部にも変化が
その組織指導部が今回どうなったのか。金与正が組織指導部の副部長のままいるのかどうかちょっと分からないのですが、先ほど言った趙甬元(チョ・ヨンウォン)が、彼は常務委員でそして朝鮮労働党書記だというふうに先ほどの労働新聞の写真の肩書についていました。
内部情報によると、組織担当書記になった。これは組織指導部を担当する党の書記ということですね。この組織担当書記というのは権力のナンバー2なのですね。
金日成が生きていた時、金正日は組織担当書記だったのです。そこに趙甬元(チョ・ヨンウォン)がついた。しかし趙甬元に自由にさせないために、組織指導部長に政治局委員の金才龍(キム・ジェリョン)がなった。金才龍は組織指導部長だと明確に書かれてあります。
内部情報によると、「趙甬元が権力を振るいすぎないように牽制するために、金才龍(キム・ジェリョン)を持っていった。二人を牽制させているのだ」という話がありました。
そこと金与正との関係はどうなっているのか。趙甬元と金与正は大変近いという情報もあって、今後も観察しないといけません。
◆対日担当の責任者は金与正か
最後に拉致問題との関係で言いますと、対日担当の責任者は誰なのかということが一番関心をもたれるわけですけども、労働党大会の最終日、12日にですね、金与正が副部長という肩書で副部長の談話というのを出しました。しかし副部長というのは先程言ったようにかなり(地位が)低いわけです。労働新聞に写真も出てこない。
第一副部長という肩書きで韓国を非難したり、これまではアメリカを非難したりしていた。この間出していたのですが、今回副部長っていう肩書でしかし韓国軍を非難する談話を出した。韓国軍が深夜に閲兵式をやった可能性があるとアップしたのですけども、「隣でお祭りをやっているのに、それを警戒だとか観察だとか言うことがけしからん」と、そういうようなことを言ったのですけど、対南については、まだ権限を持ってるのではないか。
それを裏付けるように、金英哲(キム・ヨンチョル)は政治局委員を留任しましたが統一戦線部長どまりで、対南工作担当の党書記ではなかったのですね。つまり、北朝鮮の労働党の体制というのは部長がいて、その上に書記がいるのです。書記がその分野のトップになる。そして総書記として金正恩がその上にいるということなのですが、対南担当の党書記が空席なのですね。
金与正が副部長として避難談話を出したということですけども、まあ金正恩は金与正に、「お前しばらくの間は内政に口出すな、対南・対日・対米だけやっておけ」といったという内部情報を最近入手しましたが、そのことを裏付けるように降格しました。対南非難声明を出したが、非難談話を出したということです。我々としても今後もその北朝鮮の内部情勢を見ながら、どこにパイプを作ったらいいのかというも考えていかなければならない。
報告で決められた政策内容についても、検討すべき課題がたくさんあるのですが、それは次の課題にして来週に議論したいと思っています。
今日は「朝鮮労働党第8回党大会について」と題して、組織・人事について分析をしてみました。
ありがとうございました。
以上