第29回「金正恩の警護部隊(護衛司令部)大粛正の真相」
みなさんごきげんよう。救う会テレビ、救う会全国協議会会長西岡力です。今日で第29回になります。令和3年2月20日に収録しました。
今日のタイトルは、「金正恩の警護部隊(護衛司令部)大粛正の真相」と題してお送りいたします。
半年ぐらい前に金正恩の健康に問題があるということを、シリーズで行った時に、この写真をお見せして、この救う会テレビでもお話しした記憶があります。
この金正恩と腕を組んでいる男は、尹正麟(ユン・ジョンリム)という護衛司令部の司令官ですけれども、2018年秋に公開処刑されたというお話をしましたが、具体的な事がもう少し分かってきたのでその話をしたいと思っています。
最近入手した情報に入る前に、今までの情報をちょっと整理しておきたいのですが、去年の1月に私が入手した情報でですね、護衛司令部による金正恩暗殺未遂事件が発覚して最高幹部が処刑されたということがありました。
◆2018年秋、金正恩の護衛司令部が金正恩暗殺未遂
2018年の11月中旬に、護衛司令部など70人から90人が金正恩の暗殺未遂事件犯人として逮捕された。護衛司令部幹部らが18年8月に、金正恩が元山葛麻(カルマ)海岸観光地区を現地指導した時に、工事現場で機関銃を使って暗殺しようと計画していた。機関銃を冷凍車に積んで先に運搬していた。
金与正(キム・ヨジョン、金正恩の妹)が責任者となり、護衛司令部への捜査を始めた。発覚してすぐに実行犯をすぐ逮捕せず、追跡捜査を続けた。逮捕されたのは主として護衛司令部だが、保衛部、人民武力部も含まれる。逮捕3日後に、護衛司令部政治委員、これは同司令部のナンバー2ですけども、後で金成徳(キム・ソンドク)という名前だと分かったのですが、この男も処刑されているということが正しかったのです。
政策局長から後方担当の司令官、この後方担当司令官が今回女性だということが明らかになりましたが、彼らが公開処刑されたというのですが、実は公開処刑されたのはですね、この後方担当の司令官だけだったのですね。
先ほどの尹正麟と金成徳は非公開処刑されていたという情報を入手したのですけれども、金正恩暗殺未遂事件、護衛司令部がやったということだったのですね。もうこれ衝撃的な情報で、護衛司令部というのは一番忠誠心の高い人間を集めている。自分を守る部隊ですから。
調べてみますと、私が情報を入手する前、2018年の12月11日に、東京新聞の城内記者、この人は北朝鮮報道で大変優れた特段のことをたくさんしてる人ですけども、こういう記事を書いていました。
金正恩の身辺警護を担当する護衛司令部に対して、10月中旬(2018年10月)ですね、先程言った2018年秋に処刑されたということが多いのですが、党組織指導部による検閲が行われて幹部数人が粛清されたと複数の北朝鮮消息筋が明らかにした。
最高指導者への忠誠心が極めて強固とされる護衛司令部が検閲を受けるのは異例だ。消息筋は正恩体制の強化が背景にあるとの見方を示したと言ってますけど、護衛司令部は人民軍最高司令官を兼務する金正恩に直属して、最高指導者とその家族、党高位幹部の身辺警護と首都・平壌の主要施設の警備などを担当し、約12万人の精鋭兵力を有するとの推定もあり、非常に強い権限を持つ「北朝鮮版親衛隊」と言える。
消息筋の一人によると、護衛司令部内で、党の意向を徹底し、所属する軍人の思想・行動を監視する司令部政治部の責任者(これは政治委員ですね)、これは先ほどの金成徳ですけど、数百万ドルを隠し持っていたことが発覚し、摘発されたという情報があります。
この消息筋は、「粛清された幹部は、この責任者の蓄財に関連していた可能性がある」と見るということですけども、金成徳、この政治責任者が数百万ドル隠し持っていた。これが正しかったですね。
二つ目の報道がありました。これは韓国の「朝鮮日報」ですけども、「2019年の2月に自宅から300万ドル、北の迎賓館所長を公開処刑」。北朝鮮の迎賓館「百花園招待所」の所長が昨年、これは2018年ということですね、12月に処刑されたと言っています。
東京新聞は10月と言ってましたけど、不正腐敗の罪などで公開処刑されていたことが分かった。
金正恩労働党委員長が昨年末から強調している「腐敗との戦争」の一環だと解釈されている。このほか労働党や軍の幹部多数が粛清された。平壌に詳しい消息筋によると、「百花園招待所の資料は昨年2018年10月、労働党組織指導部の検閲で不正が発覚した。同招待所は、金正恩一家や指導部の警護を担当する護衛司令部所属である」と。その護衛司令部の検閲で不正蓄財が発覚したのですね。
所長は大佐クラス、消息筋は「検閲の結果、所長の家から米ドルで300万ドル、現在のレートで約3億3000万円が発見された。招待所に勤務する女性たちとのスキャンダルも罪名に加えられた」と語った。
平壌のある街角で執行された公開処刑には、護衛司令部や北朝鮮軍関係者、労働党や内閣の幹部らが出席したということです。これも護衛司令部の検閲の結果、不正腐敗が見つかって処刑されたという情報なのですね。
こういう情報があったところで、韓国の脱北者人権活動家、元政治犯収容所に入っていた人ですけど、姜哲煥(カン・チョルファン)さんもこういう発信をしました。彼はユーチューブで放送をしてるのですね。去年の3月です。
「護衛司令官の尹正麟(ユン・ジョンリム)大将は、同司令部のナンバー2である政治委員の金成徳(キム・ソンドク)上将、(大将と中将の間)らとともに2019年秋に平壌市内の姜健(カン・ゴン)軍官学校校庭で処刑された」と。彼は19年とこの時言ったのですが、でも今の情報からして18年であることは間違いない。
◆護衛司令部幹部のスマホから位置情報入りのスマホが
護衛司令部最高幹部の背信を一般住民が知ると衝撃が大きいので、党や軍の幹部らを集めて処刑を行った。ここでこの処刑の理由が衝撃的だったのですね。処刑の理由は、金正恩の別荘を守る護衛司令部の高位幹部のスマートフォンから、外国の機関が密かに設置したと見られるGPS装置が発見された。
金正恩がその別荘に来た時、スイッチを入れるとその情報が外国の機関に伝わる。政治警察である国家保衛省ではGPS装置が内蔵されたスマートフォン300台以上が平壌に入り、そのうちかなりの部分が金正恩を守る護衛司令部に入っていると見ている、と。
300台も入ってるGPS装置が内蔵されたスマートフォンによる金正恩所在情報流出という処刑理由については、これは私も今年に入り聞いていました。これはかっこの外に出すべきだったのでしょうけど、西岡も聞いてたということですね。
それから尹正麟司令官の自宅で300万ドルの外貨が発見されたという情報も、これは姜哲煥さんが言っていました。「金正恩暗殺、機関銃を使って暗殺」と言ったのですけども、そうではどうもないようです。
それもあって、このGPSがあったのか、あるいは暗殺未遂事件はこのGPSのことが曲がって伝わったのか、私は後者ではないかと思ってるのですが、しかしこれも重要なことなのです。
そして「元山で」というキーワードがあって、元山というのは金正恩の特閣という別荘があったり、金正恩は小さい時元山で育ったので、でそこが好きで何回も行ってるのですね。
◆米国は金正恩の位置情報をリアルタイムに掴んでいた
それでは私は去年の4月に6月号の月刊「HANADA」にこういうことを書きました。「私は2017年頃、複数の米軍に近い筋から、米軍は金正恩の位置情報をリアルタイムに掴んでるという情報を聞いていた」と。ただ、これは聞いていたけど言わなかったのです。金正恩が知ってるとまたそれを調べるかもしれないと思ったのです。
逆にこの時考えたのは、なぜ私みたいな民間人にこんな軍事機密を言うのだろうか、と。金正恩を脅すためにやってるのかなと思いました。ただある筋は内部に協力者がいる、と。「GPS装置が内蔵された携帯電話が使える」というふうに伝えてくれた。
別のところで日本でも米国関係者が、リアルタイムで位置情報をつかんでいると2017年頃言っていたということを、私は間接的に聞きました。意図的に米軍はその頃、「どこにいるか分かってるぞ」と流した。「これ以上核開発続けたらお前らを殺すぞ」というメッセージだった。
心理戦だったと思いますが、ただし2018年頃に既にそれが発覚されたという情報があった。それで私もGPSの話をするようになったのですけれども、そしたら先ほどの護衛司令部にGPSが入ってるという話が出てきた。
そしてまた文章に戻りますが、17年9月のこのような出来事だった護衛司令部粛正の前年ですね、北朝鮮が6回目の核実験を成功させ、米国西海岸まで届く大陸間弾道ミサイルの発射実験を行ったので、その頃米朝軍事衝突の直前まで来たいた。
◆金正恩が元山にいたと思われた日米軍戦略爆撃機が元山沖に
9月23日、グアムの米軍基地から世界最強といわれているB1B戦略爆撃機が2機飛び立ち、日本海を北上して海の休戦ラインと言われていた北方限界線を越えて北朝鮮の西海岸の地方都市元山、ここでまた元山が出てくる。元山沖の上空で軍事演習を行った。
元山は海の海岸にある街です。そのちょうど前の海の上で、米国が戦略爆撃機だけでなくて、護衛する戦闘機もたくさん行ってるわけです。それから空中空輸機なども行ってる。そして演習をやったのです。
ところが北朝鮮軍はレーダー波を発信せず、戦闘機のスクランブル発進がなかった。米軍は、元山沖でのB1Bの演習を北朝鮮は気づかなかったようだと思って、意図的に逆にやったのだと公表をしました。それを知った金正恩はすぐ、「どうなってか調べろ」と防空司令部に命じたところ、「わが軍のレーダーは性能が悪くてB1Bはとらえることができません」という回答を得た。「戦慄した」と。私が聞いた内部情報です。
◆その時から金正恩は核実験とミサイル発射を停止
その時から突然金正恩は、核実験とミサイル発射で挑発することをぴたりと止めました。そして11月に一回だけ、日本海にロフテッド軌道でミサイル発射して、大気圏再突入技術の検証が済んでない大気圏で再突入した時に、弾頭は割れてしまったのに、「完成した」と言って完全に止めたのですね。
「これ以上やったら殺すぞ」という脅しが効いたということですが、文章に戻りますけれども、内部情報は取れてないのだから、私は9月23日に金正恩が元山の別荘に滞在していたのではないかと予測しています。
元山は金正恩が幼い頃過ごした思い出の土地で、宮殿のような豪華な別荘を建ててしばしば訪問している。その別荘を警護する護衛司令部要員が、GPSを装着されたスマートフォンで金正恩の所在情報を米軍に伝えていた可能性がある。
この私の推測は、護衛司令官処刑の理由が明らかになったことで、余計可能性が高まったと言える。米軍は位置情報が分かってるという事、一方北朝鮮内部から護衛司令部司令官あるいは護衛司令部の大粛清の理由がGPSだったということが一致したので、いよいよ信憑性が高まったということですが、ここまでが去年の春にお話した内容です。
◆護衛司令部の粛清が2018年秋にあった
けれども今回明らかになったことはですね、これは1月にやはり姜哲煥さんがユーチューブで話をしました。私も別の筋から同じ話を入手していました。護衛司令部の粛清が2018年秋にあったのは間違いない、と。
具体的に日付まで分かった。2018年11月13日に処刑、と。収容所送りをやった。司令官の尹正麟81歳は、13日に慈江道介川教化所に無期懲役で収監された。そして教化所で非公開で処刑された。
彼は肺がん治療中であった。組織指導部の検閲を受けて、多額のドルの賄賂を受け取っていたことが判明したということですね。金正恩が本当に信頼していて、これは金正日時代からの護衛司令官なのです。護衛司令部だけをずっと生え抜きでやってきている。金正日・金正恩一家を守ることに命をかけた人が、今は殺されたということです。
そしてもう一人の政治委員金成徳(キム・ソンドク)上将です。やはり尹正麟大将と一緒に11月13日に介川(ケチョン)教化所に収監されて、そしてそこで非公開処刑された。
彼の罪状はですね、護衛司令部の財政部長の金愛淑(キム・エスク)、この方は女で29歳ですけど3か月に1回、700ドルの賄賂を受け取って、また金愛淑をはじめとする護衛司令部の女性軍人と性行為を行っていたという罪状だったそうです。
そしてやはり11月13日、姜健軍官学校、これは士官学校ですけども、そこに校庭があったのですね。よくそこで処刑がされるのですが、高射砲、上空にいる飛行機に向けて打つ砲ですけど、これも使って処刑が行われた。その時公開処刑されたのは4人だということが明らかになりました。
そのうち1人が護衛司令部の財政部長の金愛淑少佐です。金与正の側近だったということです。そして護衛司令部の資金を握っていた。財政部長ですから。政治委員の金成徳や幹部部長に司令部の資金から3か月に1回、7千ドルを上納していた。
金成徳と1週間に2回会って性的関係を持っていた。幹部部長ら他の幹部とも性的関係を持っていた。「南朝鮮の不純映像」を鑑賞し、麻薬を常用していた。司令部の資金を20万ドル以上横領していたという罪状だったわけです。
金与正の側近だったので、金与正は彼女をかばってですね、処刑を免れるようにしたようですが、しかし金正恩がうんと言わなくて処刑されたという話があります。
◆護衛司令部の子弟が通う高校の生徒が半分に
もう一人が東洋会社、これは護衛司令部の外貨稼ぎの会社です、この総裁・朱ソンチョル50歳。会社の資金120万ドルを私利私欲の為に隠匿浪費した。一部を組織指導部は検閲時に自宅から回収した、と。麻薬の売り買いをしていた。財政部長の金愛淑と性的行為を持っていた。この金愛淑はすごい人ですね。
そして米国情報機関に買収され、GPS付きスマホを護衛司令部に持ち込んだ。この東洋会社というのは主として東南アジアで活動している。そこで買収されたようです。
そしてもう後二人女性2人。これは巫堂(ムーダン)ですね。これだけ不安定だとですねみんな占い師にいくのですね。朝鮮の占い師をムーダンというのですが、殺されたようです。一人は81歳だったと言われています。
2017年から18年末まで続いた護衛司令部の大粛清で、少将以上幹部97人が処刑されるか収容所に入るか、地方追放になった。少佐から大佐までの中間幹部数千人がクビになった。大粛清があったということです。その結果ですね、平壌には護衛司令部の子弟が通う高校がある、ミサン第一高等中学、これは日本でいう高校ですが、この生徒の半分が消えてしまった。
平壌の大城(テソン)区域に所在する平壌の四大第一高校のうちの一つ。第一高校というのはエリートが通うところなのです。平壌にはあと3つあるのです。その在学生の半分が政治犯収容所に収容されるか、地方に追放されてしまった。
先程言ったように97人あるいは数千人の粛清があったので、親と一緒に家族連座制で生徒たちも粛清された。「代を継いで最高首脳部を護衛する人材を育てよ」という金正日の親筆指示で護衛司令部幹部のの幹部の子弟を教育するために作られた学校なのですが、在校生の80%が護衛司令部かその関係機関、先程の東洋会社みたいなのも含まれるわけです、その子弟だったのですが、大粛清が行われたので半分の生徒がいなくなった。
つまり幹部の半分、子どもを持ってる幹部の半分が粛清されたということで、本当に大粛清だったということはここからも分かりますよね。
◆そして警護部隊が4つに増えた
それでこういうことが起きた。警護部隊が4つになりました。金正恩は護衛司令部を信用できなかった。それで去年自分や金与正を警護する護衛司令部を信じられなくなって新しい警護部隊を3つ作った。護衛司令部も残してありますから4つの部署が金正恩の直接の指揮下にあってお互いを牽制しあってきた。
護衛司令部は尹正麟の後任にクァク・チャンシク上将が来ました。そしてその後、党中央委員会護衛処というのを作りました。ヒョン・スンチョル上将が司令官です。国務委員会警衛局というのも作りました。キム・チョルギュ上将が司令官です。4千人規模だと。
そして最高司令部護衛局というのを別途作りまして、キム・ヨンホ中将が司令官で、1万人規模です。ここにですね李雪柱(リ・ソルジュ)、金正恩の妻ですが、金正恩の妻のお父さん、この人は空軍の金日成のが乗る飛行機のパイロット、1号パイロット出身で空軍士官学校で教官などをやっていたのですが、李雪主が金正恩の婦人になって出世したわけですね。ドローン攻撃に対して防御する521部隊というのを作った。
アメリカがドローンでテロリストを暗殺した事件ありましたよね。それを見てそういうのを作ったのですね。ところがその521部隊というのは平壌の中心地に部隊があります。平壌を守るわけですからね。そこで兵役に行くと自宅から通勤できるのですね。すごく楽だと言うので賄賂を使ってみんなが入るということになって腐敗して、最近そこの後任部隊が検閲を受けたという話があるのです。
それからこれをちょっと、拉致とも関係あるのですが、旧党作戦部安明進さんもここの所属だったのですよ。労働党の工作機関でテロや拉致をやる部隊です。もの凄い強い特殊部隊なのですが、これでも対外工作のための部隊なのですが、それが今は偵察総局の作戦局に変わったのですが、その安明進氏たちの武装工作員を対外テロ部隊から移して自分を警護する最高司令部護衛局に移したということであります。
◆誰も信用できなくなった
誰も信用できなくなって、自分の身辺を守ってる人間も、アメリカのスパイがいたと自宅を調べてみるとみんな外貨があった。金与正の側近と言われている人間がみんなと性的な関係を持っていた。麻薬をやっていた。南朝鮮のポルノでも見てたのではないでしょうか。
そういうことで少しでも怪しいと思う人間は殺すと。護衛司令部の幹部たちの子どもたちが消えた。学校では半分生徒がいなくなったというようなことが今起きています。
疑心暗鬼になってるその大きな原因は経済制裁が効いているということです。経済制裁で追い込んで、「先圧力・後交渉」で追い込んだ。今菅総理は、「一対一で会いましょう」と言って、「経済制裁を解いてほしいのなら拉致被害者を返しなさない」と言ってる。この道しかないというふうに思います。
今日は「金正恩の警護部隊(護衛司令部)大粛正の真相」と題してお送りいたしました。
ありがとうございました。
以上