03_さらなる制裁ですべての拉致被害者救出を!
私たちは、「単独制裁こそ効果がある」と主張してきました。平成18年7月の北朝鮮によるミサイル連射に対して、わが国は直ちに単独制裁を発動し、国連安保理は北朝鮮非難決議を全会一致で採択しました。10月の地下核実験の暴挙を契機に、わが国は追加制裁を発動し、国連安保理は制裁決議を全会一致で採択し、「人道上の懸念」という言葉で「拉致問題」が明示されました。一部で、「制裁は効果がない」という主張が見られましたが、これらの総合的効果として、北朝鮮は6者協議復帰に追い込まれています。また、厳格な法執行と制裁発動により、テポドン発射と核実験に不可欠な物が輸入できず、失敗したことも考えられます。断固たる制裁こそが北朝鮮の対日政策を変え、核・ミサイルのみならず、拉致問題解決にも効果があるのです。
効果1 金正日に日本の決意を伝え、対日政策を変えさせる
制裁は、金正日に向けたメッセージである。日本が拉致を理由に単独制裁を発動すれば、金正日に日本の不退転の決意が明確に伝わり、「8人死亡、2人未入境」というシナリオを書いたこれまでの担当者は間違いなく替えられる。また金正日政権は、「拉致問題の解決がない限り、国交正常化も、経済協力も得られない」ことを知り、「拉致問題の解決」を考えざるをえなくなる。そのための経済制裁である。
効果2 韓中ロの拉致解決協力を引き出せる
制裁は韓国・中国・ロシアへのメッセージにもなる。韓・中・ロは米国主導で対北朝鮮経済封鎖などが実施されることを避けたいので、金正日政権に対して核問題での譲歩を迫るべく様々な説得を行なっているが、日朝国交回復に伴う日本からの資金をあてにしている。日本が拉致を理由に単独制裁をかけていれば、いくら核問題で金正日が大きく譲歩しても、それだけでは日本は拉致を理由にした制裁を解除せず、資金も出さず、妥協は成立しない。結局、韓・中・ロは金正日政権に対して、拉致問題で日本を納得させうる対応をするようにと説得せざるをえなくなる。逆にいえば、そのような判断を韓・中・ロ政府にさせるためには、日本が拉致だけを理由にして制裁発動すること以上によい策はない。
効果3 国連安保理決議に拉致を取り上げさせるステップになる
平成18年7月のミサイル連射を契機として、日本政府は拉致も理由として直ちに単独制裁を発動し、10月の核実験でも追加制裁を発動しました。国連安保理も、核実験に対する北朝鮮制裁決議の前文で、拉致問題を意味する「人道上の懸念」に言及しました。拉致問題では、当事国日本が自ら制裁をかけなければ、とうてい他国の協力は得られません。今後は、「すべての拉致被害者を返さない限り制裁を続ける」よう国際社会に訴える必要があります。
効果4 日米同盟の維持強化にも効果がある
制裁は効果がないなどという人たちは、その全体状況を見ていない。対話により妥協が可能との虚構にしがみついている。テロ国家をどう無力化するのか、独裁国家をいかに民主化し人権抑圧をやめさせるのか、朝鮮半島の安全保障をどう考えるのかについては、米国任せで他人事になっている。日本が今、拉致を理由に対北朝鮮制裁に踏み込むことは、ブッシュ政権と協力して金正日政権を処分する事業に積極的に参与する第一歩につながる。それなしには、日米同盟の維持強化も、日本の安全繁栄も危うくなる危機が目の前にある。
効果5 ポスト金正日候補に、拉致被害者の帰国がなければ経済協力がないことを伝える
制裁はポスト金正日候補へのメッセージでもある。北朝鮮内部は、いつ何が起こるかわからない状態で、金正日に対する国民の支持は地に落ちている。政変が起きるとすれば、軍隊か政治警察などの武力をもっている部署が、金正日を暗殺したり逮捕するという形になる可能性が大きいと思われる。一時的に治安が乱れ、内戦状態になるかもしれない。そうなった場合、どのようにして拉致被害者を救出するかを考えておく必要がある。ここで重要なのが、ポスト金正日を狙う人々に、日本がどれくらい拉致問題に本気なのかを伝えておくことだ。今後、日本から食糧支援や経済支援を受けるには、拉致被害者全員を返さねばならない、と広く知らせる必要がある。それができればいざ事が起こった時、反金正日政権が工作機関に命じて被害者を全員確保し、流れ弾などに当たって死なれたりしないように保護するだろう。そのためにも単独制裁により日本が本気で怒っていることを伝えることがもっとも重要である。